「都心で広がる『シェアハウス』。孤独を嫌う若者たちと、単身世帯の増加が背景」「家賃を抑えつつ豊かな共有空間へ。ワンルームの壁をつなぐ新たな居住」
2016年5月27日の報道概要
単身世帯の増加を背景に、複数人で共同生活を送る「シェアハウス」の人気が都市部を中心に高まっている。個室を確保しながら、リビングやキッチンなどを共有する住まい方で、若年層を中心に利用者が増えており、新たな居住スタイルとして注目を集めている。
シェアハウスは、一般的なワンルームより家賃を抑えられるほか、家具や家電が備え付けられている物件も多く、進学や就職を機に都市部へ移り住む若者や外国人居住者から支持を集めている。運営会社は、シアタールームや共用ラウンジを備えた物件、英語での交流を目的とした物件など、特色あるコンセプトを打ち出し、入居者同士の交流を重視した住環境づくりを進めている。
一方で、共同生活ならではの生活習慣の違いやプライバシーの確保、人間関係のトラブルなどを課題として挙げる声もある。
2016年5月当時の背景
2016年当時、日本では単身世帯の増加が社会の大きな変化となっていました。2015年国勢調査では、単身世帯は約1,842万世帯となり、全世帯の約34.5%を占める最大の世帯類型となりました。若年層を中心に「一人暮らし」が当たり前となる一方、都市部では家賃の高騰や住宅の狭さも課題となり、新たな住まい方が求められていました。
こうした中で注目を集めたのがシェアハウスです。家賃を抑えられるだけでなく、家具や家電が備え付けられ、初期費用を軽減できることから、進学や就職で都市部へ移る若者を中心に利用が拡大しました。さらに、共用ラウンジやシアタールームを備えた物件、英会話や国際交流をコンセプトとした物件など、「人とのつながり」を求める人にもまた、需要が高まっていました。
2026年現在の状況
2026年現在、シェアハウスは2010年代のようなブームは落ち着きました。当時は「新しい住まい方」として注目を集め、多くの事業者が参入しましたが、その後は市場の淘汰や再編が進みました。一方で、シェアハウスという住まい方そのものが廃れたわけではありません。
現在は、女性専用や外国人向け、テレワーク対応など、特徴を明確にした物件が増えています。東京などでは家賃の高止まりも続いており、家賃や初期費用を抑えられる住まいとしての魅力は、現在も変わらず支持されています。
この10年で変わったのは、シェアハウスが「新しいライフスタイル」ではなく、「数ある住まいの選択肢の一つ」として受け入れられるようになったことです。話題性は落ち着いた一方で、都市部の住まい方の一つとして社会に定着したと言えるでしょう。
ずっと一緒か、今だけ一緒か
普通に考えれば、他人と同じ家で共同生活をしたいと思う人は、それほど多くはないでしょう。それなのに、なぜシェアハウスという住まい方を選ぶ人が現れたのでしょうか。それはコストの問題だけではないように見えます。
もっとも、他人と寝食を共にするという行為そのものは、決して珍しいものではありません。寝台列車や長距離フェリー、海外の安宿のドミトリーなど、旅において見知らぬ人と空間を共有する場は昔からありました。そして、それらには一つの共通点があります。それは、「いつかはそこを離れる」という前提です。
シェアハウスも、その延長線上にあるのかもしれません。一生そこで暮らすと考えれば抵抗があっても、「数年だけ」「今だけ」と思えば、一つの経験として受け入れられる人もいます。もちろん、こうした暮らし方が合う人もいれば、合わない人もいるでしょう。シェアハウスは、共同生活そのものを求める住まいというより、「期間限定なら共同生活も選択肢になる」という人たちにとっての”寝台列車”なのかもしれません。
10年後の未来
人は、それぞれ異なる共同体で暮らしています。生まれてからずっと同じ土地で暮らす人もいれば、家をシェアする人、仕事や大学で地元を離れ、見知らぬ地域を”間借り”する人もいる。そして、日本という大きな共同体に、移民として暮らす人もいます。同じ場所にいても、「ここで一生暮らす」と考える人と、「いずれ離れる場所」と考える人では、その場所や共同体との向き合い方は自然と変わってくるでしょう。
あなたが暮らしている家は、誰と暮らしている場所でしょうか。そして、その家が建つ地域や国は、誰と暮らしている場所なのでしょうか。もしかすると私たちの住まいとは、大きなシェアルームの中にある、それぞれの個室なのかもしれません。
