「『四国電力伊方原発3号機が原子炉を起動』 新規制基準の下で四国に広がる再稼働の波」「『脱原発とエネルギー政策の現実』 東日本大震災の教訓の先に選ばれた再稼働という選択」
2016年8月13日の報道概要
四国電力は13日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の原子炉が「臨界」に達したと発表した。東京電力福島第1原発事故を受けて導入された新規制基準の下での再稼働は、九州電力川内原発に続いて2例目となる。
3号機は12日に原子炉を起動し、制御棒を引き抜く作業が進められ、続く13日には核分裂反応が一定の割合で続く臨界に達したことが確認された。四国電力は15日にも発電と送電を再開する予定で、9月上旬の通常運転再開を見込んでいる。
伊方原発の再稼働をめぐっては、安定した電力供給や燃料費の削減につながるとして、政府や四国電力が必要性を訴えてきた。一方、重大事故が起きた場合の避難計画や安全性への懸念から、周辺住民や反対する市民らは再稼働に抗議している。
福島第1原発事故から5年余り。原発の再稼働を進める政府と、安全性に不安を抱く住民らとの間で意見が分かれる中、伊方原発3号機が再び動き始めた。
2016年8月当時の背景
2016年当時、原発再稼働をめぐる市民感情は、福島第1原発事故から5年余りが経過してもなお強い警戒感が残る一方、電力の安定供給や料金負担を考えれば再稼働も必要だとする意見が併存していました。特に伊方原発では、重大事故が起きた場合の避難計画に対する不安が大きく、周辺住民からは「本当に安全なのか」と再稼働を疑問視する声が上がっていました。
ただ、原発停止によって火力発電への依存が高まり、電気料金や燃料費の上昇につながっていたことから、「安全性は重要だが、いつまでも原発を止めておけるのか」という現実的な意見もありました。2015年には川内原発が再稼働し、伊方3号機はこれに続く再稼働となりました。事故への恐怖と、暮らしや経済への負担。2016年の再稼働は、この2つの感情が交錯する中で受け止められていました。
2026年現在の状況
2026年現在、原発再稼働をめぐる市民感情は、2016年当時のような強い警戒感が残る状況から、賛否を決めきれない層が大きく増加しています。2024年の全国調査では、政府の原発再稼働・建て替え方針について「反対」31%に対し「賛成」27%、「どちらとも言えない」が41%でした。事故への不安が消えたわけではない一方、電気料金やエネルギー安全保障、脱炭素などを背景に、原発を現実的な選択肢として見る人も増えています。
伊方原発周辺でも、不安はなお残っています。愛媛県は現在も30km圏を対象に避難計画を整備しており、地震や津波など複合災害時の避難が課題となっています。 一方、伊方3号機では安全性向上評価が継続され、2026年7月には5回目の評価結果が公表されました。 「原発は怖い」と、「現実には必要なのではないか」という市民感情が同居する状況です。
「安全」という言葉をどこまで信じるのか
原発再稼働をめぐる問題の根底には、設備の安全性だけでなく、国や電力会社に対する「信頼」の問題があります。福島第1原発事故以前には「安全神話」とも呼ばれる考え方が広がっていましたが、実際に重大事故が起きたことで、「想定外だった」という説明に対する国民の受け止め方も変わりました。
現在は、地震や津波、全電源喪失などへの対策が強化されている一方、「ドローンなど、まだ想定されていない事態が起きたらどうするのか」といった疑問も残ります。「安全対策を講じたから大丈夫」という説明だけではなく、「想定外が起きる可能性をどう考え、それでも被害を抑えられるのか」まで問われるようになりました。原発をめぐる現在の不安は、危険性そのものだけでなく、安全を保証する側をどこまで信頼できるのかという問題でもあります。
10年後の未来
原発事故の記憶は、国民にとって簡単には消えないトラウマとして残り続けるでしょう。通常、トラウマは克服し、安心できる状態を目指すものです。しかし原発のように、社会がこの先も付き合い続けなければならないものであれば、むしろ事故への恐怖を完全になくさないことが、安全につながる可能性があります。
「もう大丈夫だ」という空気が広がれば、かつての安全神話が再び生まれるおそれがあります。だからこそ、事故の記憶を風化させず、「まだ見落としている危険があるのではないか」と問い続けることが重要になります。安心できないという感覚を失わないことが、むしろ安全を守るための力になる。原発との共存には、そんな皮肉な関係が続いていくのかもしれません。
