「土用の丑商戦、代替ウナギ拡大 資源減少・価格高騰で新商品続々」「ウナギ代替品、市場に広がる 資源保護と価格高騰で各社工夫」
2016年7月30日の報道概要
夏の風物詩である土用の丑の日を前に、ウナギの代替食材を活用した商品が相次いで登場している。資源量の減少を背景にニホンウナギの価格高騰が続く中、小売各社や食品メーカーは、ナマズやパンガシウスを使った蒲焼き風商品をはじめ、サンマやナスなどを用いた代替メニューの販売を強化している。
ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されており、稚魚の不漁などを背景に仕入れ価格は高止まりが続く。こうした状況を受け、各社は味や食感を再現した代替商品の開発を進め、手頃な価格で土用の丑の日需要の取り込みを図っている。
2016年7月当時の背景
当時は、ニホンウナギを取り巻く資源問題が深刻化していました。2014年には国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを絶滅危惧種(EN)に指定し、資源保護への関心が急速に高まっていたのです。
さらに、養殖に必要なシラスウナギは2015~2016年漁期も不漁となり、養殖業者の仕入れ価格は高騰しました。ニホンウナギの養殖は天然のシラスウナギに依存しているため、稚魚の減少はそのまま市場価格の上昇につながり、土用の丑の日を前に家計への負担も増していました。
こうした状況を受け、食品メーカーや流通各社は、ナマズやパンガシウス、サンマ、ナスなどを使った「ウナギ風商品」の開発を加速させました。蒲焼きのタレや焼き方を工夫することで、ウナギらしい味わいや食感を再現し、価格を抑えながら土用の丑の日の需要に応えようとしたのです。
資源保護と伝統的な食文化の継承という相反する課題を両立させる手段として、代替食品が注目を集めたことが、このニュースの背景にありました。
2026年現在の状況
ニホンウナギを取り巻く環境は、この10年で大きく改善したとは言えません。ニホンウナギは現在も国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(EN)に分類されており、養殖用のシラスウナギも依然として天然資源への依存が続いています。
一方で、2025年にはシラスウナギの漁獲量が約10年ぶりの高水準となり、卸売価格は1kg当たり前年の約250万円から約170万円まで下落しました。その影響で、小売価格にも落ち着きが見られ、かつてのような「代替品ブーム」は一服しています。
しかし、資源保護に向けた取り組みは新たな段階に入りました。代替食品の開発だけでなく、ウナギそのものを持続可能に供給する技術開発が進み、2026年には卵から育てた「完全養殖ウナギ」が世界で初めて試験販売されました。人工種苗の生産コストも2016年の約4万円から約1,800円まで大幅に低下しており、商業化への期待が高まっています。
2016年には「ウナギの代わりをどう食べるか」が課題でしたが、現在は「本物のウナギをいかに持続可能に食卓へ届けるか」へと、技術開発の焦点が移りつつあります。
鰻へのこだわりか、鰻文化へのこだわりか
ウナギが減っていると聞けば、「守ろう」という話になりそうなものです。ところが2016年は、ナマズなどを使った代替品が次々と登場しました。少し不思議な話です。ウナギが減っているのに、まず広がったのは、、『増やす方法』よりも、『代わりを探す方法』でした。
このニュースを見ていると、日本人が守ろうとしていたのは、ウナギそのものではなく、「土用の丑の日に鰻を食べる」という習慣だったようにも思えてきます。
年に一度、少し贅沢をして、家族で食卓を囲む。その時間が続くのであれば、「ウナギらしさ」があればいい――そんな空気が、代替品の広がりから伝わってきます。もしかすると当時、人々が心配していたのは、「本物が食べられないこと」ではなく、年に一度の楽しみが失われることだったのかもしれません。
10年後の未来
ウナギの減少が問題になると、人々は2つの方向へ動きました。1つは、アナゴやナマズなど、代わりになる魚を探すこと。もう1つは、完全養殖によって本物のウナギを育てることです。
一方は「ウナギっぽいもの」を作ろうとし、もう一方は「本物のウナギ」を増やそうとする。一見すると、どちらも「守る」取り組みに見えます。
ただ、少し見方を変えると、人々が守ろうとしていたのは、ウナギそのものではなく、「今年も鰻を食べたい」という習慣だったようです。本物かどうかよりも、今年も食卓に並ぶことを、人々は守ろうとしていたのかもしれません。
