「三井物産や味の素、テレワークを本格導入へ 場所を問わない働き方を模索」「『出社』の概念が変化、育児や介護との両立で優秀な人材確保へ大手メーカーが動く」
2016年5月16日の報道概要
大手企業の間で、在宅勤務やモバイルワークなど「テレワーク」を導入する動きが広がっている。三井物産や味の素などが試験導入や本格運用に乗り出しており、従業員がオフィスに出社せずに働く新たな勤務形態への関心が高まっている。
背景には、少子高齢化による労働力不足への対応に加え、育児や介護と仕事の両立を支援し、働き方の選択肢を広げる狙いがある。企業にとっては、場所や時間にとらわれず働ける環境を整えることで、優秀な人材の確保や生産性の向上につなげることも期待されている。
テレワークでは、パソコンやスマートフォンなどを使って社外から業務を行い、電子メールやチャットなどで社員同士が連絡を取り合う。これまで「会社に出勤して働く」ことが当たり前だった日本の職場に、仕事をする場所を柔軟に選ぶという考え方が広がり始めている。
一方で、対面での意思疎通が減ることによるコミュニケーション上の課題や、勤務時間の管理、情報セキュリティーなど、解決すべき問題も少なくない。テレワークが企業の働き方として定着するか、今後の取り組みが注目される。
2016年5月当時の背景
2016年当時、少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、企業には従来の「出社して働く」形にとらわれない働き方が求められていました。特に育児や介護を理由に離職せざるを得ない人をどう仕事につなぎ留めるかが課題となっていました。
政府もテレワークを重要な政策の一つに位置づけ、2015年に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」では、子育て中の女性や育児をする男性、介護を担う労働者を対象に、在宅勤務の普及を進める方針を示していました。
一方、当時のテレワークはまだ一般的とはいえません。国土交通省の2014年度調査では、週1日以上終日在宅で働く雇用型テレワーカーは約220万人、全労働者の3.9%にとどまりました。
こうした中、味の素など一部の企業が在宅勤務制度などを導入し始め、テレワークは「特別な働き方」から企業が本格的に検討する制度へと変わり始めていました。
2026年現在の状況
2016年当時、テレワークの導入を進めていた三井物産や味の素は、その後も働き方の改革を進めています。三井物産では現在、業務内容や状況に応じて社員が働く場所を選択できるリモートワーク制度を導入しており、固定席を設けないオフィス運用なども進めています。会社に出社することを前提とした働き方から、仕事に合わせて場所を選ぶ働き方へと変化しています。
味の素も、コロナ禍以前から進めていたテレワークを発展させ、在宅勤務やサテライトオフィス、オンラインでの業務などを組み合わせています。2026年には本社オフィスも新たな環境へ移転し、対面での交流や共創の場としてオフィスの役割を見直しています。
また、NTTではハイブリッドワークを推奨しており、2026年7月時点でNTT本体のリモートワーク実施率は56.2%となっています。
「家で働くな!」と「家で働け!」
日本の労働環境では長い間、まるで小学生が宿題を家に持ち帰るように、会社の仕事を家に持ち帰ることも珍しくありませんでした。
2016年当時、政府は「働き方改革」を掲げ、長時間労働の是正を進めていました。目指していたのは、仕事のためにいつまでも会社に残らないこと、そして会社を出た後まで仕事を持ち帰らないことです。言ってみれば、「仕事が終わったら、早く家に帰りなさい」という政策でした。
ところが同じころ、企業側ではテレワークの導入が検討され、「会社に来なくても、家で仕事ができます」という環境を整え始めていました。政府は「家では働くな!」と言い、企業は「家でも働ける!」と言っているようにも見えます(笑)。
もちろん、両者は矛盾していません。政府がなくそうとしたのは「仕事が終わった後も家で仕事をすること」。一方、企業が進めたのは「通勤せずに、家で仕事をすること」でした。
10年後の未来
テレワークを含め、2016年以降、労働環境の見直しは少しずつ進んできました。テレワークが広がったことで、「会社に来なくてもいい。ここじゃなくていいよ」という働き方が可能になりました。休暇も以前より取得しやすくなり、「この日は休みます」「うん、休んでいいよ」という関係も広がっています。
労働者にとっては、ありがたい変化です。働く場所を選べる。休む日も選べる。仕事と生活のバランスを、自分で決められる場面が増えてきました。
ところで、この先AIやロボットがさらに仕事を担うようになり、労働者が働きやすくなった未来はどうなるのでしょうか。
「ここじゃなくていいよ」
「休んでいいよ」
そして
「来なくていいよ」
もしかしたら、こんな日が来るかもしれません。もちろん、それが「人間は働かなくても豊かに暮らせる」という意味なら、素晴らしい未来かもしれません。
ただ、「来なくていいよ」が、働く場所ではなく、あなた自身を指す言葉だったら、少し意味が変わってきますね。
