「新『会社法』が本日施行。資本金1円、取締役1人でも株式会社の設立が可能に」「誰でも社長になれる時代へ。若手起業家や主婦による『1円起業』が相次ぐ」
2006年5月16日の報道概要
16日、会社制度を抜本的に見直した「会社法」が施行された。これまで株式会社を設立する際に必要とされていた最低資本金1000万円の規制が撤廃され、資本金1円でも株式会社を設立できるようになった。
新制度では、これまで別の会社形態として認められてきた有限会社を新たに設立することができなくなり、株式会社に一本化された。一方、既存の有限会社については「特例有限会社」として存続が認められている。
最低資本金規制の撤廃によって、少ない資金で会社を設立できるようになり、個人や小規模事業者の起業を後押しする効果が期待されている。インターネットを活用した事業など、設備や店舗に大きな資金を必要としないビジネスでは、これまでよりも起業へのハードルが下がることになる。
2006年5月当時の背景
2006年当時は、長期にわたる景気低迷から回復へと向かう中、新たな事業やベンチャー企業を生み出すことが日本経済の活性化につながるとの期待が高まっていました。
従来は株式会社を設立するために1000万円、有限会社でも300万円の最低資本金が必要で、資金を十分に持たない個人にとって会社設立の大きな壁となっていました。政府は2003年から、一定の条件を満たす起業家を対象に最低資本金規制を免除する特例を設け、いわゆる「1円会社」が話題となっていました。
一方、最低資本金には、会社の財務基盤を示し、取引先や債権者の信頼を支える役割もあると考えられていました。国会でも「1円で会社を設立できること」と「会社として実際に事業を続けられること」は別問題だとの指摘が出ています。 こうした起業促進と企業の信頼性の両立が、会社法施行をめぐる大きな論点となっていました。
2026年現在の状況
改正会社法施行から20年が経過した現在、株式会社の最低資本金規制は引き続き撤廃されたままで、資本金1円から株式会社を設立できる制度は定着しています。「1円会社」は一時的な話題にとどまらず、少ない資金から会社を設立できるという選択肢を定着させました。
また、現在では個人事業主が法人化する際に合同会社を選ぶケースも一般的になっています。特に合同会社は、株式会社より設立費用を抑えやすく、意思決定の自由度も高いことから、小規模な事業や個人による起業の選択肢として広がっています。
一方、2006年当時に「有限会社」が株式会社へ一本化された変化も定着しました。新たに有限会社を設立することはできなくなり、現在残っている有限会社は「特例有限会社」として扱われています。
20年前に始まったのは、単に「1円で会社を作れる」という制度ではありません。会社を設立するためにまとまった資本を用意するという従来の考え方から、事業を始めるための「器」を先に作り、必要に応じて資金や事業を組み立てるという選択肢が広がったことに意味があります。
会社を作るのに1円?から20年
2006年当時、「1円で会社を作れる」と聞いて、正直「1円で会社を作って、そのあとどうするの?」と思った人も多かったのではないでしょうか。
しかし、20年たって振り返ると、1円は会社を運営するためのお金ではありませんでした。会社を作るために株式会社なら1000万円、有限会社でも300万円が必要だった時代に、その「入口の条件」を取り払ったことに意味があったのです。会社法では最低資本金規制そのものが廃止され、株式会社は1円でも設立できるようになりました。
では、それによって日本の起業が一気に増えたのでしょうか。必ずしもそうではありません。開業率は2006年度の4.8%から上昇した時期もありましたが、2023年度は3.9%で、最低資本金の撤廃だけで起業社会になったとは言いにくい状況です。
それでも、変わったものはあります。近年の中小企業白書では、開業費用の平均値・中央値はいずれも低下傾向にあり、2023年度の中央値は550万円となっています。
つまり、2006年に取り払われたのは「1000万円」という金額そのもの以上に、「会社は、まとまった資本を用意してから始めるもの」という考え方だったのかもしれません。
「1円で会社を作れる」と聞いて「それで何ができるの?」と思った20年前の感覚は、もしかすると「会社を作ること」と「事業を始めること」を同じものとして考えていたからなのかもしれません。会社という器を先に用意し、その中身を後から作っていく。そんな起業の形も、今では選択肢の一つになっています。
10年後の未来
2006年の改正会社法では、会社を作るためのハードルを下げることで、起業する人を増やそうとしました。しかし、日本で起業が大きく増えたとは言いにくい状況です。一方で、その後NISAなど投資を促す政策が進み、株式市場に参加する個人投資家は増えていきました。
これをプロスポーツに例えるなら、「選手もファンも増やそう」と取り組んだ結果、増えたのは選手よりもファンだった、ということに似ているかもしれません。
もちろん、ライト層のファンを取り込むことには価値がありますし、ある程度成功したのではないでしょうか。しかし、プロへ入団した選手を育て、活躍できる環境を作ること、そして「このリーグでプレーしたい」と海外からの選手に思ってもらえるような魅力を作ることについてはまだ道半ばなのかもしれません。
起業を増やすという目標も、入口を広げるだけではなく、その先の「育成」と「魅力づくり」まで考える段階に来ているのかもしれません。
