「政府、サイバー防衛の国家資格『情報処理安全確保支援士』新設を閣議決定」「深刻なサイバー人材不足に対応。2020年までに3万人の登録を目指す方針」
2016年5月17日の報道概要
政府は17日、サイバー攻撃への対策を担う専門人材を対象とした国家資格「情報処理安全確保支援士」制度を創設する方針を決めた。サイバーセキュリティー分野では専門人材の不足が課題となっており、政府機関や企業などで対策を担う人材の確保と活用を進める狙いがある。
新制度は、情報セキュリティーに関する高度な知識や技能を持つ専門家を登録し、資格保有者の情報を公開する登録制とする。登録者には継続的な知識や技能の維持を目的とした講習の受講を義務付けるほか、業務上知り得た秘密を守る義務も課す。
政府は、サイバー攻撃の増加や手口の高度化を背景に、企業などが専門家を活用しやすい環境を整えることで、国内のサイバーセキュリティー対策を強化したい考えだ。
2016年5月当時の背景
2016年当時、サイバー攻撃は一部のIT企業だけの問題ではなく、行政機関や一般企業にも及ぶ身近な脅威になっていました。特に2015年には、日本年金機構が標的型攻撃を受け、約125万件の個人情報が流出する事件が発生し、社会に大きな衝撃を与えました。
また、2016年のIPA「情報セキュリティ10大脅威」では、組織向けの第1位に「標的型攻撃による情報流出」が選ばれ、インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用も総合1位となっています。攻撃の巧妙化に加え、企業や行政のIT依存が進む中で、情報セキュリティーを専門的に担える人材の不足も課題となっていました。
こうした背景から、サイバーセキュリティーを個々の技術者の経験だけに頼るのではなく、専門知識を持つ人材を国家資格として認定し、継続的な教育や登録制度によって一定の水準を確保しようという動きが強まっていたのです。
2026年現在の状況
2016年に創設された「情報処理安全確保支援士」は、その後、サイバーセキュリティーの専門人材を国家資格として認定する制度として定着しています。2026年4月時点の登録者は2万6,453人に達し、制度開始以降、登録者は着実に増加しています。
一方、サイバー攻撃をめぐる環境は当時よりさらに複雑になっています。企業や行政だけでなく、製造業やインフラなど幅広い分野が攻撃対象となり、情報システムの停止や情報流出が社会活動そのものに影響するリスクも高まっています。
現在では、登録者の勤務先も情報サービスやソフトウエア業にとどまらず、製造業、運輸・通信、金融、官公庁など多岐にわたります。 2016年に始まったこの制度は、社会を維持するために欠かせない基盤の一つになっています。
「詳しい人」から「資格を持った人」へ
例えば昔の会社なら、「社内のネットワークは社内の担当者が管理する」という考え方でも成り立ちました。しかし、インターネットやスマートフォン、クラウドなどが普及すると、会社の情報は社内だけに閉じなくなります。自動車でいえば、社員が安全運転するだけでなく、ブレーキやエンジンを専門家が整備する必要があるのと同じです。
そこで国は、専門家を「見える化」し、一定の知識・技能や秘密保持、継続的な学習を求める仕組みを作りました。 サイバー空間が社会のインフラになるにつれ、「詳しい人に任せればいい」から「誰に任せるのかを国が一定程度保証する必要が出てきた」段階へ移った、と見ることができます。
10年後の未来
情報セキュリティーというと、インターネットやコンピューターを思い浮かべますが、「情報を守る」という考え方そのものは昔からありました。戦争では敵の兵力や配置、補給状況などの情報が勝敗を左右し、情報を知られること自体が大きなリスクになります。
個人情報も同じです。昔は小学生が名前を書いた名札を胸につけて歩くことも、持ち物に大きく名前を書くことも当たり前でした。それが現在では、登下校時には名札を外したり、名前を内側に書いたりする学校もあります。名前そのものが危険になったのではなく、情報が集められ、売買され、別の情報と組み合わされて利用されるようになったからです。
インターネットやスマートフォンは、こうした情報の流通を一気に加速させました。これから10年、さらに情報が増え、流通する速度が上がれば、今は「別に知られても困らない」と思っている情報まで、守るべきものになるかもしれません。
情報が増えれば、守るべきものも増える。10年後には、私たちが「秘密」や「個人情報」と考える範囲そのものが、今とは変わっているのかもしれません。
