「改正刑事訴訟法が成立 取り調べの録音・録画、裁判員裁判対象事件などで義務化へ」「取り調べを可視化へ 改正刑訴法成立、3年以内に施行」
2016年5月24日の報道概要
参院本会議は24日、警察や検察による取り調べの録音・録画(可視化)を一部の事件で義務付ける改正刑事訴訟法を可決、成立した。裁判員裁判の対象事件や検察の独自捜査事件などを対象とし、取り調べの過程を映像と音声で記録することを捜査機関に求める。
取り調べの可視化によって、捜査機関が作成した供述調書だけでなく、取り調べそのものを裁判で検証できるようになる。密室で行われてきた取り調べの適正化や、虚偽の自白による冤罪の防止につながることが期待されている。
一方、改正法には、容疑者らが他人の犯罪について供述する見返りに、起訴の見送りや求刑の軽減などを認める司法取引の導入や、通信傍受の対象犯罪の拡大も盛り込まれた。取り調べの透明性を高める一方で、捜査機関に新たな捜査手法を認める内容となっている。
取り調べをめぐっては、これまで密室でのやり取りが供述の任意性を判断する上で大きな問題となってきた。今回の法改正は、捜査の透明性を高める一歩となる一方、新たな捜査手法の運用を含め、今後の司法の在り方が問われることになる。
2016年5月当時の背景
取り調べの可視化が法制化される背景には、捜査機関の取り調べや供述調書に依存してきた刑事司法への批判がありました。特に2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件は、捜査の適正性そのものを揺るがし、刑事司法制度の見直しを促しました。
また、2009年に発覚した郵便不正事件では、厚生労働省元局長の村木厚子氏が逮捕・起訴されたものの、裁判では検察側の主張を裏付ける供述調書の信用性が崩れ、2010年に無罪が確定しました。
こうした事件を受け、法務省は2011年に法制審議会へ制度改革を諮問し、取り調べと供述調書に過度に依存する捜査・公判の見直しを進めました。2014年の答申を経て、2015年に改正法案が国会へ提出され、2016年5月の成立に至りました。
2026年現在の状況
2016年に成立した改正刑事訴訟法は2019年6月に施行され、裁判員裁判対象事件や検察官独自捜査事件などで、逮捕・勾留中の被疑者の取り調べを原則として録音・録画する制度が導入されました。
その後、可視化は対象事件以外にも広がっています。検察庁では2024年度、身柄事件の被疑者取り調べ10万7091件のうち10万6297件で録音・録画を実施し、実施率は99.3%に達しました。法定義務の対象外も含む数字で、制度導入前の2015年度の5万9411件から大幅に増えています。
一方、すべての取り調べが対象になったわけではありません。可視化の対象範囲や弁護人の立ち会いなどをめぐる議論は現在も続いています。警察では、法施行前から録音・録画の試行を重ねており、制度導入後も運用の検証が続けられています。
統計の外れ値か、構造的な問題か
日本で普通に暮らしている私たちにとって、警察や検察は、事件やトラブルが起きたときに頼れる存在です。何の心当たりもないのに突然逮捕されたり、起訴されたりするかもしれないと、普段から心配している人は多くはないでしょう。起訴された事件の有罪率が非常に高いのも、検察が裁判に持ち込む事件を慎重に選んでいるからかもしれません。
そんな仕組みの中でも、ごくまれに冤罪や不適切な取り調べが問題になる事件があります。ほとんどの事件が問題なく処理されていることを考えれば、統計的には「外れ値」ともいえるような事件です。
ただ、だからといって、無視していいとは限りません。もし、その事件がたまたま起きたのではなく、同じようなことが起こり得る仕組みになっていたとしたら、それは「統計の外れ値」ではなく、「構造的な問題」です。取り調べの可視化は、外れ値と構造を見極めるためでもあるのかもしれません。
10年後の未来
証拠を追い求める警察が、取り調べについては、その証拠を残していなかった。そう考えると、取り調べの可視化は、捜査の世界にも「記録を残す」という考え方が広がっていくきっかけになるのかもしれません。
これからは、取り調べの内容を後から映像で確認できることが当たり前になり、警察官自身にとっても「自分たちがどんな取り調べをしたのか」を説明できることが、捜査の一部になっていくのでしょう。
そして、もし私たちが取り調べの映像を見ることができたとしたら、いつ「カツ丼」が出てくるのか、気になるかもしれません。
