「液晶から有機ELへ。テレビ・スマホの未来を占うディスプレイ革命」「有機ELへの投資加速。国内メーカー、次世代ディスプレイ競争で巻き返しへ」
2016年6月28日の報道概要
国内の電機メーカー各社が、次世代ディスプレイとして期待される「有機EL(OLED)」への投資を本格化させている。液晶に代わる新たな表示技術として、高画質や薄型化、省エネルギー性能などに優れる有機ELは、今後のテレビ市場やモバイル機器市場を左右する技術として注目を集めている。
有機ELは画素自体が発光するため、バックライトが必要な液晶に比べ、より鮮やかな色彩や高いコントラストを実現できる。一方で、生産コストの高さや製造の難しさなど課題も多く、本格的な普及には時間を要するとの見方もある。
世界市場で韓国メーカーとの競争が激しさを増す中、国内メーカーにとって有機ELへの投資は、競争力回復をかけた重要な戦略と位置付けられている。次世代ディスプレイの主流となるのか、今後の市場動向が注目されている。
2016年6月当時の背景
2016年当時、テレビやスマートフォン向けの液晶パネルは価格競争が激化し、高性能だけでは利益を確保しにくい状況になっていました。かつて液晶技術で世界をリードしていた日本メーカーも、海外メーカーとの競争が厳しさを増し、新たな成長分野を模索していました。
そこで期待されたのが、自ら発光することで高いコントラストや鮮やかな色彩、薄型化を実現できる有機ELでした。しかし、有機ELは量産技術が難しく、多額の設備投資が必要なため、事業化には大きなリスクも伴いました。次世代ディスプレイの主役となるのか、それとも液晶が主流を維持するのか。業界全体が技術革新と収益性の狭間で、大きな転換点を迎えていました。
2016年現在の状況
現在、有機ELは高級テレビやスマートフォン、スマートウォッチなどで広く採用されるディスプレイ技術となっています。液晶を上回る高いコントラストや鮮やかな色彩、薄型化を実現し、高価格帯製品では主流の技術として定着しました。一方で、有機ELパネルの量産競争では韓国メーカーが先行し、日本メーカーの多くは採算性や投資負担の大きさから自社での量産を断念・縮小しました。
現在の日本メーカーは、自社でパネルを製造するのではなく、海外製パネルを採用しながら、映像処理技術や画質調整、製品設計などで付加価値を高める戦略へと転換しています。有機ELは普及した一方で、日本が目指した「量産による世界市場での覇権奪還」は実現しなかったのが現状です。
なぜ日本企業は有機ELの量産化を断念したのか
有機ELは、液晶とは異なり、自発光によって高画質や薄型化を実現できる一方、量産初期は寿命や焼き付き、歩留まりの低さなど、多くの技術的課題を抱えていました。最初に有機EL製品を市場へ送り出したのは日本企業でしたが、高い品質基準を満たし、安定して大量生産できる体制を整えることを重視した結果、巨額投資への慎重姿勢が強まり、多くの企業が量産から撤退しました。
一方、韓国企業は、品質が完全ではない段階でも量産に踏み切り、生産を続けながら歩留まりや製造技術を改善していく戦略を採用しました。工場そのものを開発の場と捉え、量産経験を積み重ねることで技術力を高め、結果として世界市場で主導権を握ることになります。有機ELをめぐる明暗は、技術力の差というよりも、「完成してから走る」のか、「走りながら完成させる」のかという、開発思想とリスクの取り方の違いが生んだ結果だったと言えるでしょう。
10年後の未来
有機ELだけではありません。全面タッチパネルを採用したスマートフォン、ワイヤレスイヤホン、接続端子を最小限にしたノートPCなど、この10年で市場の主導権を握った製品には共通点があります。それは、従来の完成度よりも、新しい体験や市場の変化を優先したことです。
一方、日本企業は品質や耐久性、幅広い利用者への配慮を重視し、より完成度の高い製品を目指しました。その姿勢は日本のものづくりを支えてきた強みである一方、変化の速い市場では機会を逃す要因にもなりました。もちろん、どちらが正しいとは言い切れません。
しかし、新しい技術が次々と生まれる時代だからこそ、企業には「完成を待つ勇気」と同じくらい、「未完成でも走り始める勇気」が求められるのかもしれません。石橋を叩いて渡るという言葉があります。しかし、この10年の日本企業は、石橋を叩いて、渡らなかったのかもしれません。
