「定額制の音楽配信サービス、国内利用率はわずか2%にとどまる」「所有から利用への転換か、無料至上主義か。デジタル音楽の過渡期」

2016年6月11日の報道概要

 音楽配信サービスの利用が広がる中、定額料金で楽曲を聴き放題とする「サブスクリプション型音楽配信」の国内利用率が依然として低い水準にとどまっていることが、民間調査会社の調べで分かった。

 調査によると、Apple MusicやLINE MUSIC、AWAなどの定額制音楽配信サービスの利用率は全体の2.0%にとどまり、多くの消費者にはまだ十分浸透していない実態が明らかとなった。

 音楽業界では近年、CD販売の減少が続く一方、インターネットを通じた配信サービスの拡大が進んでいる。欧米では定額制サービスの利用が急速に広がっているが、日本ではCD購入や楽曲のダウンロード販売が依然として根強い人気を保っている。

 利用者からは「聴きたい曲だけ購入したい」「毎月料金を支払う必要性を感じない」といった声も聞かれ、定額制サービスの価値が十分に理解されていないとの指摘もある。

2016年6月当時の背景

このニュースの背景には、音楽を聴く環境が大きく変化する一方で、利用者の習慣や業界の仕組みがまだ追いついていなかったことがあります。2016年当時はスマートフォンが広く普及していましたが、音楽の楽しみ方は依然としてCD購入やレンタルが中心でした。日本ではお気に入りの作品を手元に所有する文化が根強く、定額制サービスへの抵抗感も少なくありませんでした。

また、当時は通信容量の制限を気にする利用者も多く、外出先で音楽を常時ストリーミング再生することへの心理的なハードルがありました。さらに、アーティストやレコード会社の間でも、ストリーミング配信がCD販売に悪影響を与えるのではないかという懸念が強く、多くの人気楽曲が配信されていませんでした。

そのため、海外では定額制サービスが急成長していた一方、日本では従来の音楽販売が主流で、サブスクリプションの価値がまだ十分に浸透していない時期だったのです。

2026年現在の状況

観測から10年が経過した現在、音楽配信の定額サービスは日本でも完全に定着しました。2016年に利用率2%だったサブスクリプションは、今では多くの人にとって音楽を聴く最も一般的な手段となり、SpotifyやApple Music、YouTube Musicなどが日常的に利用されています。かつて配信に慎重だった多くのアーティストも楽曲を解禁し、「音楽を所有する」から「必要な時にアクセスする」へと消費行動は大きく変化しました。

一方で、CD市場が完全に消えたわけではありません。特典やコレクション性を重視した商品として一定の需要を維持しており、ライブやファン活動と結び付いた価値を持ち続けています。

消費者の価値観かビジネスモデルの変化か

日本でサブスクリプションが浸透した背景には、消費者の価値観の変化だけでなく、提供者側のビジネスモデルの変化もありました。消費者にとっては、CDを所有することよりも、その時々の気分や流行に合わせて幅広い音楽へアクセスできる利便性や、新しい楽曲との出会いに価値を感じる人が増えました。

一方で、提供者側にも大きな変化がありました。人々が日雇いより正社員を、さらに不労所得を求めるように、企業もまた一度売って終わる商品より継続的な収入を生む仕組みを重視するようになりました。その結果、サブスク企業は目先の利益だけでなく、将来の継続収入を見込んで巨額の投資ができるようになっています。

例えば、テレビ局はサッカーW杯やWBCの放映権を購入しても、その番組内の広告収入で回収しなければなりません。しかし配信サービスは、その大会をきっかけに加入者が増え、その後も契約が続けば将来的に回収できます。だからこそ、従来の放送局では出せない金額を提示できるのです。

10年後の未来

10年後、私たちは「所有すること」と「利用すること」のどちらに価値を見いだしているのでしょうか。

サブスクリプションは非常に便利です。音楽も映画も書籍も、必要な時に利用できます。しかし、その便利さはサービスが続き、自分のアカウントが使えることを前提としています。料金の支払いをやめれば利用できなくなり、サービス終了やアカウント停止が起きれば、それまで積み上げてきた環境や履歴にアクセスできなくなることもあります。

これは賃貸住宅と分譲住宅の違いに少し似ているのかもしれません。賃貸は気軽で身軽ですが、自分のものにはなりません。一方、購入には負担が伴いますが、自分の資産として残ります。

音楽、映像、ゲーム、ソフトウェア、さらには自動車や住居まで利用型サービスが広がる中で、私たちは本当に「所有」から自由になったのでしょうか。それとも、便利さと引き換えに、いつでも失う可能性のある、積み重ならない世界へ移り住んだだけなのでしょうか。