「ローソンなど大手コンビニ、訪日外国人向けに『QRコード決済』の導入実験を開始」「中国で爆発的普及の『アントフィナンシャル(Alipay)』に対応、インバウンド需要を狙う」

2016年6月16日の報道概要

 ローソンなど大手コンビニエンスストア各社は16日、スマートフォンに表示されたQRコードを利用して支払いを行う新たな決済サービスの実証実験を一部店舗で開始した。増加する訪日外国人旅行者の利便性向上を目的としており、海外で普及が進むスマートフォン決済の導入に向けた取り組みとして注目を集めている。

 利用者は専用アプリに表示されたQRコードを店舗の端末で読み取ることで、現金やクレジットカードを使わずに支払いを完了できる。特に中国をはじめとするアジア圏では、スマートフォンによる決済サービスが急速に普及しており、日本国内でも対応を求める声が高まっていた。

 政府は訪日外国人旅行者数の拡大を成長戦略の柱の一つに掲げており、決済環境の整備は重要な課題となっている。スマートフォンひとつで支払いを済ませる新たな購買スタイルが日本社会に定着するのか、その動向が注目される。

2016年6月当時の背景

2016年当時の日本は、訪日外国人旅行者が急増するインバウンドブームの真っただ中にありました。政府は観光立国を掲げ、海外からの消費を取り込むことを重要な成長戦略としていました。しかしその一方で、日本の決済環境は依然として現金中心でした。クレジットカードや交通系電子マネーは普及していたものの、買い物の多くは現金で行われており、世界的に見ても有数の「現金大国」と呼ばれていました。

ところが中国では、すでにスマートフォンを使ったQRコード決済が急速に普及していました。露店や個人商店でも利用できる手軽さから、現金を持たずに生活する人も珍しくなくなっていたのです。

こうした中、日本のコンビニ各社は急増する訪日客への対応を迫られていました。QRコード決済の導入は、国内の消費者向けというよりも、まずは海外で当たり前になりつつあった新しい決済習慣を受け入れるための試みでした。当時はまだ「スマホで支払う」という行為そのものに新しさがあり、日本の現金文化とデジタル決済文化が初めて本格的に接触し始めた時期だったのです。

2016年現在の状況

観測から10年が経過した現在、QRコード決済は日本の日常に完全に定着しました。2016年当時は主に訪日外国人向けのサービスとして注目されていましたが、その後の政府によるキャッシュレス推進策や消費増税時のポイント還元事業、さらにコロナ禍で高まった非接触ニーズを追い風に利用者が急増しました。

現在ではコンビニや飲食店はもちろん、自動販売機や個人商店に至るまでQRコード決済が利用できるようになり、現金しか使えない店舗の方が珍しくなりつつあります。その中心となったのはPayPayをはじめとする国内事業者で、激しい利用者獲得競争を経て市場が集約されました。

また、QRコード決済は単なる支払い手段にとどまらず、ポイントサービスや送金、資産運用、融資などを組み合わせた生活インフラへと発展しています。かつては「スマホで支払う必要があるのか」と疑問視されていた技術が、今では多くの人にとって財布と同じくらい当たり前の存在になったのです。

QRコードの利用法の変遷

QRコードは1994年に、製造業向けの部品管理を目的として日本の デンソー が開発しました。従来のバーコードより大量の情報を高速に読み取れることから、自動車工場の在庫管理や物流システムで広く利用されるようになりました。

その後、2000年代に入ると携帯電話でQRコードを読み取れる機能が普及し、広告やウェブサイトへの誘導手段として活用されるようになります。しかし決済手段としてはほとんど注目されていませんでした。

転機となったのは2010年代の中国です。クレジットカード網が十分に整備されていなかった環境の中で、スマートフォンとQRコードを組み合わせた決済サービスが急速に普及しました。高価な専用端末を必要とせず、小規模店舗でも導入できる利便性が支持されたのです。

そして2016年前後、訪日外国人の増加をきっかけに日本でも導入が始まりました。もともとは工場の部品管理のために生まれた技術が、ウェブサイトへの誘導手段を経て人々の日常的な買い物を支える決済インフラへと姿を変えたのです。

10年後の未来

10年後、人々は現在のQRコード決済をどのように振り返るのでしょうか。2016年には現金で支払うことがまだ当たり前でしたが、2026年には「小銭を数えるのは面倒」という感覚が広がりました。同じことが、今のQRコード決済にも起きるのかもしれません。

すでに店舗では、商品を手に取ってそのまま店を出るだけのウォークスルー決済や、顔認証による本人確認と支払いを組み合わせた技術の実証が進んでいます。もしこれらが普及すれば、スマートフォンを取り出し、アプリを起動し、QRコードを表示するという一連の動作すら「昔ながらの決済手段」に見える可能性があります。

未来の人々は、「昔はわざわざスマホを取り出していたのか」と驚くのでしょうか。それとも、利便性と引き換えに失われる匿名性やプライバシーへの不安から、どこかで進化が立ち止まるのでしょうか。