「物理的コストを最小化。起業初期の拠点を支えるシェアオフィスという選択肢」「他社との協業が生み出すイノベーション。壁を持たないオフィスが変える働き方」

2016年7月2日の報道概要

起業家やベンチャー企業向けに、複数の企業が一つの空間を共同利用する「シェアオフィス」の整備が広がっている。不動産事業者やデベロッパーは、オープンスペースや会議室、通信設備などを共同利用できる施設を相次いで開設し、創業間もない企業の受け皿として期待を寄せている。

シェアオフィスは、高額な敷金や設備投資を抑えながら事業を始められる点が特徴で、個人事業主やスタートアップ企業を中心に利用が増加している。入居企業同士の交流を通じ、新たなビジネスや共同事業の創出につながることを狙う施設も多い。

一方で、複数の企業が同じ空間で業務を行うことから、情報管理や機密保持への不安を指摘する声もある。また、企業の信用力を示す「自社オフィス」を持たないことに慎重な見方も根強く、従来型のオフィスとの使い分けを模索する企業も少なくない。

2016年7月当時の背景

2016年当時、日本ではスタートアップへの注目が高まり、新たな事業に挑戦する起業家が増えていました。しかし、創業間もない企業にとって、都心でオフィスを借りるための敷金や保証金、内装工事などの初期費用は大きな負担となっていました。

一方で、Wi-Fiやクラウドサービスの普及により、ノートパソコン一台あれば場所を選ばず仕事ができる環境が整い始め、働く場所の選択肢も広がっていました。その中で、低コストで利用でき、企業同士の交流も期待できるシェアオフィスが注目を集めるようになります。

ただ、他社と空間を共有することによる情報管理や、自社オフィスを持たないことへの信用面の不安も根強く、従来のオフィス文化と新しい働き方の間で、多くの企業が模索を続けていた時代でした。

2026年現在の状況

現在、シェアオフィスはスタートアップやフリーランスだけでなく、大企業も利用する一般的なオフィス形態として定着しています。特に2020年以降は、新型コロナウイルス感染拡大を契機にテレワークやハイブリッドワークが広がり、本社以外の働く場所として需要が拡大しました。現在では、営業拠点やプロジェクト単位のオフィス、地方でのサテライトオフィスなど、用途も多様化しています。

一方で、シェアオフィスの役割も変化しています。創業支援や企業同士の交流を重視した施設に加え、個室や専用スペースを充実させ、情報管理やセキュリティを重視する施設が増えています。また、スマートフォンによる入退室管理や予約システムなども普及し、利便性は向上しています。現在のシェアオフィスは「オフィスを共有する場所」から、「働き方に応じて柔軟に利用できるワークスペース」へと進化し、不動産を所有する時代から、必要な時に必要な場所を利用するサービスへと位置付けが変化しています。

信用の置き場所の変化

経営者にとってシェアオフィスは、高額な敷金や賃料、設備投資を抑えながら事業を始められる大きなメリットがありました。一方、働く側にとっても、通勤時間の短縮や柔軟な働き方を実現しやすい環境として受け入れられていきました。

しかし、シェアオフィスが広く普及した理由は、それだけではありません。取引先や社会全体の価値観も変化したことが大きな要因でした。かつては、個人でも固定電話を持っていることが信用とされ、携帯電話は「番号を簡単に変えられる」という理由で敬遠されることもありましたが、現在では携帯電話番号は本人確認にも利用される重要な情報となっています。

企業も同じように、一等地のオフィスや自社ビルが信用の象徴だった時代から、事業内容や実績、利用者の評価などで信頼を得る時代へと変化しました。シェアオフィスの普及は、働き方だけでなく、「企業の信用」のあり方が変わり始めたことを示す出来事でもあったのです。

10年後の未来

シェアオフィスの普及は、「会社はどこにあるか」より「会社は何をしているか」が重視される時代の始まりでした。そして未来には、信用の置き場所そのものが変わっていくのかもしれません。かつて信用は、住所やオフィス、自社ビルといった「場所」にありました。

しかし今では、企業も個人も、積み重ねた実績や評価、つまり「このアカウントは信用できるか」というデジタル上の履歴が信頼の基準になりつつあります。未来から振り返れば、シェアオフィスの普及は、信用の置き場所が物理的な場所からデジタル空間へ移り始めた歴史の転換点だったと語られるのかもしれません。