「外来植物を市民が駆除 都市の自然を守る」「河川敷の外来種、広がる駆除活動 市民が在来種を保全」

2016年8月21日の報道概要

 都市部の公園や河川敷などで、在来植物の生育を脅かす外来植物の駆除に取り組む市民ボランティアの活動が広がっている。外来植物は繁殖力が強く、在来種の生育場所を奪うなど、生態系への影響が懸念されている。

 各地では、自治体やNPOなどが市民に参加を呼び掛け、河川敷や公園で外来植物を根から抜き取るなどの作業が行われている。外来生物法に基づく特定外来生物には、オオキンケイギクやアレチウリなどの植物も指定されている。

 こうした活動は、行政だけでは対応が難しい広範囲の外来植物を市民の力で防除するとともに、身近な自然や生物多様性について考える機会にもなっている。一方、外来植物は繁殖力が強く、1度の駆除で根絶することは難しいため、継続的な取り組みが課題となっている。

2016年8月当時の背景

 日本では海外から持ち込まれた植物の一部が野外に定着し、在来種の生育環境を圧迫する問題が広がっていました。2005年に施行された外来生物法では、生態系などへの被害を及ぼすおそれがある外来生物を特定外来生物に指定し、飼育や栽培、運搬、輸入などを規制しています。2015年には環境省と農林水産省が「生態系被害防止外来種リスト」を公表し、動物229種、植物200種の計429種を掲載しました。

 なかでもオオキンケイギクやアレチウリは、河川敷や道路沿いなど身近な場所にも広がり、駆除には人手が必要でした。実際、2015年には兵庫県内の河川敷で50人が参加してオオキンケイギクを駆除し、427キロを回収する活動も行われています。外来植物の防除は、行政だけでなく、市民やNPOなどが担う活動になっていました。

2026年現在の状況

 外来種の問題は10年後も解決していません。一方、2016年当時から広がっていた市民参加型の駆除活動は、その後、思わぬ形で多くの人の関心を集めることになりました。

2017年1月にテレビ東京で始まった「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」は、池の水を抜いて外来生物を駆除し、在来種や生態系を守る活動を番組として紹介。放送を重ねるにつれて人気を集め、千葉県習志野市や埼玉県草加市など、自治体からも依頼が寄せられるようになりました。

 どの植物や生き物が在来種で、どれが外来種なのか、普段から意識している人は決して多くありません。それでも、「池の水を全部抜いてきれいにする。そして、いったい何が出てくるのか、何がそこに暮らしているのかを見る」という企画は、多くの視聴者を引きつけました。これは、実際に活動へ参加するほどではなくても、身近な自然環境に関心を持っている人が多かったことの表れとも考えられます。

田園風景の外来種

 環境省では、外来種を「人間の活動によって本来の生息・生育地から別の地域に持ち込まれた生物」としています。つまり、外国から来た生物だけでなく、国内でも本来いなかった地域へ人為的に持ち込まれれば外来種になります。また、すべての外来種が問題なのではなく、生態系などに被害を及ぼすものが侵略的外来種とされています。

 この定義で身近な自然を見ると、アメリカザリガニやウシガエルなど、すっかり日本の田園風景に溶け込んでいる生物も外来種ですし、農作物として定着したジャガイモも、もともとは日本に存在しなかった植物です。いずれも現在では、外来種という意識をほとんど持たずに接している人が多いでしょう。一方で、問題になるのは「外来種であること」そのものではなく、在来種を圧迫するなど、生態系にどのような影響を与えるかです。

 つまり外来種対策とは、単純に「昔の自然へ戻す」ことではなく、どの生態系を守り、どのような変化を防ぐのかを判断する活動ともいえます。今回のニュースは、身近な自然を守る活動の一方で、私たちが「自然」と呼んでいるものの中にも、人間が持ち込んだ生物がすでに組み込まれているという事実を映し出しています。

10年後の未来

 外来種も、在来種の生態に大きな影響を与えず、その地域の環境の中で一定のバランスを保つようになれば、やがては新たな生態系の一員になっていくのかもしれません。

 ところで、このニュースよりもずっと前、琵琶湖では外来魚が大きな問題になった時期がありました。ブラックバスやブルーギルが増え、在来魚への影響が懸念されたため、滋賀県は駆除に頭を悩ませていたのです。一方で、ブラックバス釣りは今では一つのレジャーとして定着しています。外来種の代表のように扱われてきた魚も、いつの間にか人間の暮らしの中に別の形で組み込まれているわけです。

 今の琵琶湖は、在来種と外来種の新たな生態系が構築された結果なのでしょうか。それとも、人間が駆除や生息数の管理を続けることで、バランスを保っているのでしょうか。

 この先、日本の自然環境はどうなっていくのでしょう。かつて人の食料として持ち込まれたウシガエルと、その餌として持ち込まれたアメリカザリガニ。すっかり溶け込んで、いまでは日本の田園風景の一部になった彼らは、むしろ環境変化を心配する側になっているのかもしれません。