「待機児童解消へ 保育士の待遇改善が課題」「保育士確保へ 待遇改善急ぐ」
2016年08月28日の報道概要
待機児童の解消に向け、政府が保育士の確保と待遇改善を急いでいる。保育所の整備が進む一方、保育士不足が受け入れ枠拡大の壁となっており、保育士を安定的に確保できるかが課題となっている。
政府は2016年度から保育士の給与を平均3%程度、月額約6,000円引き上げるなど処遇改善を進めている。さらに、経験や技能に応じて給与を上乗せする仕組みの導入も検討しており、保育士の離職防止と新たな人材の確保につなげたい考えだ。
安倍政権は「1億総活躍社会」の実現に向け、待機児童対策を重要政策の一つに位置付けている。8月に決定した経済対策でも、保育士や介護職員の待遇改善を盛り込み、必要な財源を確保する方針を示している。
保育所を増やすだけでは、保育士が確保できなければ受け入れ児童を増やすことはできない。待機児童解消を進める上で、保育士の待遇改善をどこまで実効性のあるものにできるかが焦点となっている。
2016年08月当時の背景
2016年当時、政府は「待機児童ゼロ」を掲げ、保育所の整備を進めていました。しかし、施設を増やしても、そこで働く保育士がいなければ子どもを受け入れることはできません。保育士不足は、待機児童対策そのものを左右する問題になっていました。
背景には、保育士の仕事の責任や負担に対して、賃金や職場環境が十分ではないという問題がありました。政府はすでに2012年度から処遇改善を進めており、2015年度には給与改善を約7%まで積み上げていましたが、さらなる改善が必要とされていました。
また、当時から保育士の確保には賃金以外の課題も指摘されていました。離職を防ぐ職場環境や、資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」の復職支援、住宅支援など、複数の対策を組み合わせる必要があるとされていました。
2026年現在の状況
この10年間、保育士の待遇改善は実際に進められてきました。2016年度には約8%だった処遇改善は、その後も段階的に積み上げられ、2024年度には人件費の改定率が10.7%となりました。
一方、保育士の確保が完全に解決したわけではありません。こども家庭庁は現在も「保育人材の確保」を主要な政策課題として掲げ、処遇改善に加えて、職場環境の改善や業務負担の軽減、保育現場のDXなどを進めています。
つまり、2016年に「待遇を改善して保育士を確保する」とされた課題は、10年後にも形を変えながら残っています。ただし、当時の問題がそのまま続いているというより、賃金を上げるだけでは人材確保は十分ではないという段階に進んだ、と見ることもできます。
「人材流出」と「人材確保」
保育士不足に対して、待遇改善は重要な対策でした。給与を上げ、手当を充実させ、働くメリットを増やす。いわば「良い条件を提示して人を集める」という発想です。
しかし、人手不足の土台には、そもそも「人が離れていく」という問題があります。仕事量が多く、休憩が取りにくく、持ち帰り仕事や保護者対応などの負担が重ければ、条件を少し良くしても、長く働き続けてもらえるとは限りません。
プロスポーツなら、「年俸を上げるのでぜひウチのチームに」と誘われても、「でも、このチーム雰囲気悪そうだし、主力陣は移籍したがってるし、、」と思う選手もいるかもしれません。人材確保も同じで、人を集める前に、人が離れにくい環境をつくることが土台になる。
「人が来ない」のではなく、「人が残らない」。その違いを見落としたまま人を集め続けても、人手不足はなかなか解消しないのかもしれません。
10年後の未来
「人手不足」と聞くと、つい「もっと給料を上げれば人が来る」と考えてしまいます。もちろん賃金は重要ですが、それだけで仕事を選ぶ人ばかりではありません。「給料が高くても、ほぼ毎日残業で週1日しか休めないなら無理」という人がいても不思議ではないでしょう。
保育士に限らず、介護、運送、建設、飲食、医療など、人手不足が続く仕事には似た構造があるのかもしれません。給料を上げることで、蛇口からバケツに流れ込む水を増やすことはできるでしょう。でも、働き続けたいと思える環境に穴が開いていれば、水はそこから流れ出てしまいます。
「どうすれば人を集められるか」だけではなく、「どうすれば人が離れにくい環境をつくれるか」
人手不足を嘆く業界は、人が足りないのではなく、もしかすると、人が働き続けられる環境のほうが足りてないのかもしれません。
