「ARM買収、英株主が承認」「ソフトバンク、英半導体設計大手ARMを傘下に」
2016年8月31日の報道概要
英国の半導体設計大手ARMホールディングスの株主は30日、ソフトバンクグループによる買収案を承認した。買収額は約240億ポンド(約3.3兆円)で、ARMはソフトバンク傘下に入り、独立企業としての歴史に幕を下ろすことになる。買収には今後、英国裁判所の承認などが必要となる。
ARMは半導体そのものを大量生産するのではなく、プロセッサーの基本設計を開発し、その技術を半導体メーカーなどにライセンスする事業を展開している。省電力性能を強みとし、スマートフォンを中心に世界中の機器に採用されている。2015年にはARMの技術を使ったプロセッサーを搭載するチップが世界で850億個以上出荷されていた。
ソフトバンクは、ARMが今後、スマートフォンだけでなく、あらゆる機器がインターネットにつながる「IoT」分野で成長すると判断。約3.3兆円という巨額の買収に踏み切った。ARMの買収は、通信会社から世界規模のテクノロジー企業へと事業領域を広げるソフトバンクの戦略を象徴する案件となっている。
2016年8月当時の背景
2016年当時、スマートフォンは急速な普及期を経て成熟段階に入りつつありました。一方で、スマートフォン以外のさまざまな機器がインターネットにつながるIoTへの期待が高まっていました。自動車や家電、工場の機械などにコンピューターが組み込まれ、今後さらに膨大な数の半導体が必要になると考えられていました。
ARMは、この流れの中心にいました。同社の技術は2015年時点で世界で販売されたプロセッサー搭載チップの3割以上に使われ、スマートフォンでは95%以上にARMの技術が採用されていました。ARM自身は半導体を製造するのではなく、設計を提供することでライセンス料や使用料を得るビジネスモデルを築いていました。
ソフトバンクの孫正義社長は、ARMの買収について、目先の利益よりもIoTなど次の技術の波に備えるための投資だと説明していました。約3.3兆円という巨額買収だけに、当時は「高すぎるのではないか」との見方もありましたが、ソフトバンクはARMの技術が将来さらに広い分野へ浸透すると見込んでいました。
2026年現在の状況
ARMはその後、2016年9月にソフトバンクによる買収が完了し、ロンドン証券取引所から上場廃止となりました。約7年間にわたりソフトバンクの完全子会社として事業を続けた後、2023年9月に米ナスダック市場へ再上場。公開価格は1ADS当たり51ドルで、ソフトバンクは再上場後も約9割を保有する大株主となりました。
ARMの成長分野も大きく広がりました。スマートフォンに加え、自動車、データセンター、クラウドなどでARMの設計が使われています。2026年にはAI向けデータセンター用CPU「Arm AGI CPU」を発表し、これまで半導体の設計技術をライセンスしてきたARMが、初めて自社設計の量産半導体製品を手掛ける段階へ踏み出しました。
2026年5月時点で、ソフトバンクグループはARMの約86%を保有しています。10年前に約3.3兆円を投じて買収したARMは、現在ではスマートフォンだけでなく、AIやデータセンターなど次世代のコンピューティングを支える企業へと事業領域を広げています。
半導体の設計図を買った孫正義の設計図
2016年、ソフトバンクがARMに約3.3兆円を投じると発表すると、その買収額の大きさから「高すぎる」との見方が出ました。当時のARMの業績だけを基準にすれば、確かに巨額の買収でした。
ところが、ARMは2023年に再上場すると、2026年8月には時価総額が約2,600億ドル規模に達しています。2016年の買収額約3.3兆円と単純に比べれば、企業価値はおよそ10倍以上です。
もちろん、時価総額と買収額をそのまま比較して「10倍儲かった」とすることはできません。それでも、当時「高すぎる」とされた3.3兆円を、現在のARMの価値から振り返ると、その評価は大きく変わります。
10年後の未来
2016年、孫正義氏はARMがこれから大きく成長すると考え、約3.3兆円を投じました。ただ、これは「伸びそうな会社にお金を出した」というだけではありません。ARMという会社そのものを手に入れ、その技術を使って、これからどんな世界を作るのかまで考えていたのだと思います。競馬でいえば、馬券を買ってレースを眺めるのではなく、馬を買って自分で騎乗するようなものです。
私たち一般人なら、10年後を予測できるだけでも、かなり有能です。「この仕事はなくなるかもしれない」「この技術は広がりそうだ」と予測し、それが当たれば大したものです。
でも、世の中にはその先を行く人たちがいます。「未来はこうなる」と予測するだけではなく、「未来をこうする」と考えて、自分で会社を動かし、技術を育て、人やお金を動かしていく。未来を予測して当てる人もすごい。でも、未来を自分で作ってしまう人は、もっとすごいのかもしれません。10年後の未来は誰にも分かりません。だからこそ、自分なりの「未来の設計図」を描くことから始めてもいいのだと思います。
