「体外受精で生まれた子ども、国内累計21万人に 晩婚化で治療ニーズ高まる」「体外受精児、年間4万人超 不妊治療の広がり続く」
2016年09月17日の報道概要
日本産科婦人科学会の集計で、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療によって生まれた子どもの数が、国内で累計21万人を超えた。2014年にこれらの治療によって生まれた子どもは4万7322人に上り、1年間の出生児全体の4.71%を占める。約21人に1人が生殖補助医療によって生まれた計算となる。
不妊治療を受ける人が増えている背景には、結婚や出産の年齢が上がっていることがある。治療件数は年々増加しており、体外受精や顕微授精によって生まれる子どもの数も増え続けている。生殖補助医療は、子どもを望む夫婦にとって身近な選択肢の一つとなりつつある。
2016年09月当時の背景
不妊治療の広がりには、結婚や出産の時期が遅くなっていることが関係しています。妊娠する力は年齢の上昇とともに低下するため、妊娠を望む年齢が高くなることで、不妊治療を必要とするケースも増えます。体外受精・顕微授精による出生児は、2007年の1万9595人から2014年には4万7322人まで増加し、出生児全体に占める割合も1.80%から4.71%へ上昇しています。
一方、こうした治療には身体的な負担だけでなく、経済的な負担もありました。当時、体外受精などは基本的に健康保険の対象外で、国による助成制度が設けられていました。治療を受けたい人が増える一方で、費用をどう支えるかも社会的な課題となっていました。
2026年現在の状況
体外受精や顕微授精をめぐる環境は、この10年間で大きく変わりました。2022年4月から、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療が健康保険の対象となり、採卵から胚移植までの基本的な診療が保険適用されています。保険適用には年齢や回数などの条件があります。
出生数に占める割合も上昇しています。体外受精・顕微授精による出生児は2016年に5万4110人、2021年には6万9797人となりました。 2024年には生殖補助医療による出生児が約8万6000人となり、出生数そのものが減少する中で、出生児に占める割合はさらに高まっています。
身体と社会の時計のズレ
数十年前と比べ、社会が考える「年齢」のイメージは大きく変わりました。かつては60歳で定年退職という印象がありましたが、現在は60代でも働き続ける人が珍しくありません。健康寿命が延び、人生そのものが長くなっています。
しかし、妊娠する力は、社会の変化と同じように後ろへ延びているわけではありません。結婚や出産の時期が遅くなれば、子どもを望む時期と妊娠しやすい年齢との間にずれが生じます。体外受精などの生殖補助医療は、そのずれを埋めるための技術として発展してきました。
「人生100年時代」と言われる一方で、身体の時計まで100年になったわけではありません。社会と身体の時計は必ずしも同じ速度では進んでいない。この時間のずれも、不妊治療が広がってきた背景の一つになっているように見えます。
10年後の未来
結婚や出産の時期が遅くなるにつれて、子どもを望む年齢と、妊娠しやすい年齢との間にずれが生まれています。現在の不妊治療は、そのずれに直面した人を支えるためのものでもあります。
この先、さらに出産の時期が遅くなれば、不妊になってから治療するのではなく、もっと早い段階から備えるという考え方が広がる可能性もあります。若いうちに精子や卵子を保存しておき、何年も後になってから子どもを持つ。そんな選択が、今より身近になったとしても不思議ではないでしょう。
そうなれば出産は、かつての「授かるもの」から、「いつ授かるかを決められるもの」になっていくことも考えられます。生殖医療は、妊娠できない人を助ける技術から、社会の時間と身体の時間を合わせるための技術へと、少しずつ役割を広げていくのかもしれません。
そして、その先に待っているのは、「出産を管理する時代」なのかもしれません。いつ結婚するか、いつ子どもを持つかを考え、その時期に合わせて身体の時間まで調整する。今から見ると少し不思議ですが、一世代、二世代後には、それが当たり前になっている可能性もあります。
