「日清、カップヌードルの謎肉を10倍にした限定商品を発売」

2016年9月5日の報道概要

 日清食品は5日、同社の「カップヌードル」に入っている具材「謎肉」を通常の10倍に増量した「カップヌードルビッグ “謎肉祭” 肉盛りペッパーしょうゆ」を発売した。通常のカップヌードルに入っている謎肉を大量に入れた限定商品で、全国のコンビニエンスストアなどで販売する。

 謎肉は、豚肉や野菜などを原料とした「味付豚ミンチ」。カップヌードル発売以来、具材として親しまれてきたが、日清食品が『味付豚ミンチ』と呼ぶ具材は、インターネット上ではその正体が分からないことから『謎肉』と呼ばれていた。

 商品名にも「謎肉祭」と銘打ち、謎肉を主役に据えた異例の商品となった。販売価格は税別205円。数量限定での発売となる。

2016年9月当時の背景

 1971年に発売されたカップヌードルは、2016年に発売45周年を迎えていました。長年販売されてきた商品だけに、麺やスープだけでなく、入っている具材にも独特の呼び名や思い出が生まれていました。

 その中でも「謎肉」は、インターネットを中心に広がった愛称です。日清食品自身は「味付豚ミンチ」と説明していましたが、見た目や正体が分かりにくいことから「謎肉」という呼び方が定着。日清食品もこの呼び名を商品名に採用するまでになりました。

 食品メーカーにとっては、消費者が商品について自然に作った言葉を、販売戦略に取り込む動きです。今回は、その「謎肉」を通常の10倍にすることで、ネット上で話題になった存在を実際の商品として楽しめる形にしました。

2026年現在の状況

 2016年の「謎肉祭」以降も、謎肉を増量した商品や、謎肉を前面に押し出した企画がたびたび登場しています。日清食品も「謎肉」という呼び名を積極的に使うようになり、単なるカップヌードルの具材ではなく、日清食品を代表する“ネタ”のような存在になりました。

 2017年には、謎肉を通常の約4倍入れた「カップヌードル ビッグ 帰ってきた謎肉祭W」を発売。その後も「謎肉丼」や「謎肉まみれ」など、謎肉そのものを主役にした商品が登場し、2016年にインターネット上の愛称だったものが、メーカーと消費者の共通言語になりました。

略称は「呼びやすさ」、あだ名は「いじり」

 「謎肉」が面白いのは、単なる略称ではないところです。マクドナルドを「マック」、ポケットモンスターを「ポケモン」と呼ぶのは、名前を短くしただけです。ところが「味付豚ミンチ」を「謎肉」と呼ぶのは、商品の特徴を勝手に見つけて、少しからかうようなあだ名を付けたわけです。人間でも、名前を短くしたニックネームなら単なる呼びやすさですが、背の高い人を「ノッポ」という特徴を強調したあだ名には、ちょっとした「いじり」が入ります。

 こうした「あだ名」は、商品やサービスにもあります。携帯電話を「ガラケー」と呼ぶのも、単なる省略ではありません。「ガラパゴス化した携帯電話」という特徴を、少し皮肉を込めて表した言葉です。「グンマー帝国」も、群馬県という正式名称とは無関係に、ネット上で作られた地域イメージを名前にしたものです。群馬県もこの呼び方を敵視するのではなく、ネット上のネタとして受け入れ、公式の観光PRなどで自虐的に取り上げることがあります。

 そして、ここで重要になるのが、呼ばれる側がその「あだ名」を受け入れるかどうかです。もし日清が「怪しい素材ではありません。過度な誹謗中傷には法的対応を検討します」なんて言っていたら、みんな一気に引いていたでしょう。ところが日清は「謎肉」という呼び方を受け入れ、商品名にまで使いました。消費者からすれば、「こっちのネタを分かってくれた」と感じられるでしょう。

 あだ名は、付ける側だけでは完成しません。少し失礼だったり、からかわれているように見えたりする呼び名を、呼ばれる側が『まあ、それも自分たちだよね』と受け入れるだけでなく、その言葉に別の意味を与える。すると、単なるネットのネタだった言葉が、むしろ親しみを生む名前に変わっていくのかもしれません。

10年後の未来

 「謎肉」と言われ始めたころ、それは日清にとっては決してポジティブな言葉ではなかったはずです。「この肉、何でできているんだろう」という、ちょっとした疑問や不信感から生まれた呼び名だったのでしょう。そしてそれを日清が否定せず、受け入れたことでやがて商品の個性になり、今では「謎肉」と聞けば多くの人がカップヌードルを思い浮かべます。

 こうした変化は、ほかにもあります。かつて「オタク」という言葉には、特定の趣味にのめり込む人を揶揄するようなネガティブな印象がありました。それが今では「○○オタク」と言えば、一つの分野に詳しく、好きなものに深くのめり込めることを、むしろ長所として表現する場合があります。現在、ネガティブな印象で語られているものも、もしかしたら10年後にはポジティブな価値として見直されているかもしれませんね。