「公務員の兼業解禁へ議論本格化 政府、働き方改革の一環として検討」「人材の流動化は進むのか 公務員にまで及ぶ副業の波紋」
2016年7月12日の報道概要
政府が公務員の副業・兼業のあり方について検討を進めている。深刻な人手不足や働き方の多様化を背景に、公務員が本業以外で能力や経験を生かせる環境づくりを模索する動きで、政府は制度の見直しを視野に議論を本格化させる。
現在、国家公務員や地方公務員は営利企業への従事などが原則として制限されているが、地域貢献活動や公益性の高い分野などでは、副業・兼業のあり方を柔軟に見直すべきとの意見が出ている。一方で、公務への専念義務や利益相反、公平性の確保などを懸念する声も根強く、慎重な制度設計を求める意見も少なくない。
政府は、公務員の多様な働き方と行政サービスの信頼性をどのように両立させるかを含め、制度の具体的な方向性について検討を進める方針だ。
2016年7月当時の背景
2016年当時、政府は「働き方改革」を成長戦略の柱に掲げ、長時間労働の是正や多様な働き方の実現に向けた制度改革を進めていました。電通社員の過労自殺問題などを契機に、労働時間だけでなく、「どのように働くか」そのものが社会的な議論となっていました。
一方で、クラウドサービスやビジネスチャット、Web会議システムの普及により、場所や時間に縛られない働き方の基盤も整い始めていました。終身雇用や年功序列への信頼が揺らぐ中、副業を認める企業も少しずつ現れ、個人が会社の肩書ではなく、自らの知識や技術で価値を生み出す「キャリアの自律」が注目されるようになっていました。こうした流れを受け、公務員についても、一つの組織に専念する従来型の働き方を見直す議論が始まろうとしていました。
2026年現在の状況
現在、副業は民間企業では一般的な働き方の一つとして定着しつつあります。厚生労働省は副業・兼業を後押しするガイドラインを整備し、企業向けのモデル就業規則からも原則禁止の規定を削除するなど、制度面の見直しが進められてきました。
一方、公務員については利益相反や職務への影響、公平性の確保などの観点から全面解禁には至っていませんが、近年は制度の見直しが進みつつあります。2025年に実施された人事院の調査では、現行制度で兼業経験がある国家公務員は6.2%にとどまる一方、今後兼業を希望すると答えた職員は32.9%に上りました。
こうした結果を受け、人事院は知識や技能を生かした自営兼業の範囲を拡大し、2026年から新たな制度を施行しています。また、自治体でも兼業基準を見直す動きが広がっています。副業は「認めるか否か」という議論から、「どのような条件なら認められるか」という制度設計の段階へと移りつつあります。
そもそもなぜ公務員の副業は制限されていたのか
公務員の副業が長年制限されてきた理由は、大きく三つに分けられます。一つは、副業によって疲労が蓄積し、本業に支障をきたすこと。二つ目は、本業で得た情報や立場を副業に利用する情報漏えいや利益相反の防止。そして三つ目は、公務の公平性に対する国民の信頼を守ることです。極端な話、「あのひとの本業は警察官だから大丈夫」と思われるだけでも公平性に欠けるわけです。
このうち、後者二つは現在でも制度として制限する合理性があります。しかし、一つ目については少し違った見方もできます。本業に影響が出るから副業を禁止するという考え方は、「授業中に眠くなるから部活動は禁止」という子供へのしつけにも少し似ています。仕事に支障を出すことが問題なのであって、その原因が副業なのか、ゲームなのか、お酒なのかは本来別の話です。
10年後の未来
副業は今後さらに一般的な働き方になっていくでしょう。会社や行政が勤務時間外の過ごし方まで細かく制限する時代は少しずつ終わり、公僕と私生活、つまり「僕と私の境界線」は、これまで以上に個人の判断へ委ねられていくのかもしれません。
一方で、副業が「やりたい人の選択肢」であるうちは自由の拡大と言えますが、「生活費を補うためにやらざるを得ないもの」になれば、その意味は大きく変わります。本業だけでは暮らせない社会を、副業という仕組みで補うだけでは根本的な解決にはなりません。本来目指すべきなのは、副業ができる社会ではなく、副業をしたい人が自由に挑戦でき、しなくても安心して暮らせる社会ではないでしょうか。
副業の広がりは、働き方の自由が広がった証なのか、それとも生活を支える責任が組織から個人へ移り始めた証なのか。その答えは、これからの社会が示していくことになりそうです。
