「豊洲新市場の移転に懸念 土壌汚染対策や安全性を検証」「豊洲新市場、移転判断に慎重論 追加対策や事業費に課題」

2016年8月19日の報道概要

 築地市場の豊洲新市場への移転をめぐり、施設の安全性や土壌汚染対策に対する懸念が強まっている。豊洲の建設地は東京ガスの工場跡地で、過去の操業に伴う土壌や地下水の汚染が確認されていることから、東京都は土壌の入れ替えや盛り土、地下水の管理などの対策を進めてきた。

一方、移転をめぐっては、対策工事に多額の費用がかかっていることや、完成した施設の安全性について都民や市場関係者から疑問の声が上がっている。小池百合子知事は移転について「いったん立ち止まって考える」姿勢を示しており、11月7日に予定されている開場の是非が焦点となっている。

2016年8月当時の背景

豊洲新市場は、築地市場の老朽化や狭さを背景に、2001年に豊洲への移転が決まりました。しかし、移転先は東京ガスの工場跡地で、土壌や地下水からベンゼン、シアン、ヒ素などが検出されたため、土壌の掘削・入れ替えや盛り土、地下水管理などの対策が進められていました。東京都の専門家会議は、土壌について現地盤から2メートルまでを掘削・入れ替えたうえで、さらに2.5メートルの盛り土をする方針を示していました。

一方、豊洲市場の総事業費は2011年の3926億円から、2015年3月時点で5884億円まで膨らんでいました。2016年8月には施設がほぼ完成し、11月7日の開場を目前にしていましたが、安全性への疑問や事業費への批判が重なり、移転そのものを見直すべきだとの声が強まっていました。

2026年現在の状況

豊洲市場はその後、2016年8月31日に移転延期が正式決定され、さらに9月には建物下に盛り土がなく、地下空間が設けられていたことが明らかになりました。都がこれまで説明してきた土壌汚染対策と実際の施設の構造が異なっていたことから、問題は土壌の安全性だけでなく、都の意思決定や情報公開のあり方にも広がりました。東京都はその後、地下ピットへのコンクリート敷設や換気設備の設置、地下水管理システムの機能強化などを進めました。

最終的に豊洲市場は2018年10月11日に開場し、築地市場からの移転を完了しました。一方、地下水や地下ピットの管理は現在も続いています。2026年2月にも地下水位や空気・地下水質、地下ピット内の施設の維持管理などを確認する協議会が開かれており、10年前に問題となった安全性については、開場後も継続的な管理が行われています。

豊洲市場移転問題の因数分解

「豊洲移転問題」と一言で言っても、その中には土壌汚染、安全性、施設の使い勝手、移転費用、行政の説明、そして築地というブランドや、そこで商売を続けたいという思いまで、さまざまな問題が含まれていました。

しかも、どの因数を最初に置くかで、豊洲の問題の見え方も変わります。「築地に残りたい」という人から見れば、土壌汚染や地下水への不安は「だから豊洲へ移るべきではない」という理由になります。一方、「築地には老朽化などの問題がある」と考える人から見れば、同じ問題は「移転する前に解決すべき課題」となります。

つまり、同じ「豊洲の土壌汚染」を見ていても、出発点が違えば結論まで変わります。さらに「築地」という名前が持つ歴史やブランドまで加わり、いくつもの因数が掛け合わされて、「豊洲移転問題」という巨大な問題になっていきました。

10年後から振り返ると、実際に解決された問題、追加対策が必要になった問題、最後まで感情として残った問題があります。問題を一つにまとめる前に、いったん因数分解してみる。そうすると、当時の議論が少し違って見えてきます。

10年後の未来

2016年当時、豊洲への移転は「築地を離れる」という大きな問題として語られていました。しかし2026年には、豊洲市場は日常の風景となり、築地も場外市場を中心に食の街として残っています。「築地か豊洲か」という二択だったはずが、実際にはそれぞれの場所に別の役割が生まれました。

市場の老朽化、豊洲の土壌や地下水への不安、都の説明への不信、巨額の整備費、そして築地というブランド。2016年には、これら一つ一つが「だから移転すべきではない」という理由になったり、「それでも移転するしかない」という理由になったりしていました。

豊洲へ移転して正解だったのか、それとも築地に残るべきだったのか。結局、どちらが正解だったのかは、マグロ本人に新居の住み心地を聞いてみるしかないのかもしれません。