「9.11から15年、WTC跡地の遺物分配作業が完了」「世界貿易センターの遺物、全米各地へ 15年を経て保存先決まる」

2016年09月11日の報道概要

2001年9月11日の米同時多発攻撃から15年を迎える中、ニューヨークの世界貿易センター(WTC)跡地から回収された鉄骨や消防車などの遺物について、保存先を決めて分配する作業が終了した。

ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社は2010年から、WTC跡地から回収して保管していた遺物を、消防・警察機関、自治体、学校、博物館などに無償で提供してきた。

2016年8月までに2,600点を超える遺物が、全米50州と海外10か国の1,500以上の組織に分配された。遺物は9.11の犠牲者や救助にあたった人々を記憶するため、記念碑や展示などに利用されることになった。

2016年09月当時の背景

9.11の直後、WTC跡地からは大量の鉄骨や車両、その他の物品が回収されました。その一部は歴史的な資料として保存されることになり、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港にある格納庫17で保管されていました。

2010年に始まった分配事業では、単に遺物を処分するのではなく、各地の消防署や自治体、学校、博物館などに渡し、地域の記念施設として活用することが目指されました。

中には約1万8,000キログラムの鉄骨や、消防車、鉄道関連の部品など大型の遺物も含まれていました。2016年には保管されていた最後の遺物の分配が進み、15年にわたって一つの場所に集められていた遺物が、各地で保存される段階へと移りました。

2026年現在の状況

2016年に港湾公社による遺物の分配作業は終了しましたが、9.11の遺物を保存し、記録する活動そのものは続いています。ニューヨークの9/11メモリアル・ミュージアムは現在、9.11と1993年のWTC爆破事件に関する8万3,000点以上の資料や遺物を収蔵しており、鉄骨や消防車だけでなく、鉄骨や消防車だけでなく、犠牲者の所持品、写真、文書、当事者の証言なども収集・記録されています。

また、2026年は9.11から25年となり、同ミュージアムでは、事件そのものだけでなく、その後25年間に生まれた公共活動や地域の取り組みを扱う特別展が9月12日から開幕する予定です。さらに、収蔵品の一部はオンラインでも公開され、資料を保存するだけでなく、そこから当時の人々の生活や出来事を記録し、後世に伝える役割が大きくなっています。

なぜ世界貿易センタービルが狙われたのか

9.11では、世界貿易センターだけでなく、ホワイトハウスやペンタゴンも標的となりました。ホワイトハウスは米国の政治的な意思決定、ペンタゴンは米軍の意思決定を担う場所です。それに対して世界貿易センターは、米国経済を象徴する建物ではありましたが、経済政策や金融政策を決める中枢ではありませんでした。

それでも世界貿易センターが標的になったのは、そこが米国の繁栄や経済力を目に見える形で象徴する場所だったからだと考えることができます。建物を破壊することで米国経済の意思決定をも破壊するというのではなく、「これほど巨大で繁栄した国の象徴でさえ攻撃できる」ということを世界に示す意味があったと考えれば、その標的としての意味が見えてきます。

米国の繁栄を象徴する建物が旅客機によって破壊される映像は、米国民や世界の人々の記憶に強く残ることになりました。もしテロ攻撃の意図の一つに、米国民に消えることのない記憶を刻む、という側面があったとすれば、忘れないための「遺物の分配」は、皮肉な構図を生んだといえるでしょう。

米国は9.11の記憶を残すために、テロ攻撃によって生じた遺物を全米各地に届けました。もちろん、その目的は犠牲者を追悼し、歴史を伝えることであり、テロリスト側の意図とは正反対です。それでも結果だけを見れば、攻撃によって刻まれた「消えない記憶」を、米国自ら「消さない記憶」として保存し、さらに全国へ広げることになったとも言えます。

10年後の未来

歴史や悲劇を記憶し、次の世代へ伝えていくのは、同じ過ちを繰り返さないためでしょう。過去に何が起き、なぜそれが起きたのかを知ることは、未来を考えるうえで大きな意味があります。ただ、過去の記憶を受け継ぐということは、出来事だけでなく、そのとき生まれた憎しみや敵意まで受け継いでしまう危うさもあります。

では、過去を忘れてしまえばいいのでしょうか。かつての世代が抱えていた争いを次の世代に持ち込まず、過去に縛られることなく前を向けるかもしれません。しかし、過去を知らなければ、なぜ悲劇が起きたのかを理解できず、同じ過ちを繰り返してしまうかもしれません。

大切なのは、過去をそのまま受け継ぐことでも、すべてを忘れることでもないのかもしれません。過去から学ぶべきことは受け継ぎながら、憎しみや敵意は次の世代に残さない。9.11の遺物を残すという選択は、悲劇を忘れないことの意味とともに、過去から何を受け継ぎ、何を次の世代に残さないのかという難しい問いを投げかけています。