「家まで届く新鮮野菜 宅配ネットスーパーが都市部で急成長」「買い物難民を救えるか 食品スーパー、ネット注文サービスを拡充」
2016年7月11日の報道概要
食品スーパー各社で、インターネットを利用した注文・宅配サービスの拡充が進んでいる。共働き世帯の増加や高齢化を背景に、自宅にいながら食料品を購入できるサービスへの需要が高まり、各社は宅配体制の整備やサービスエリアの拡大を急いでいる。
利用者はスマートフォンやパソコンから商品を注文し、自宅まで配送を受けられるため、買い物にかかる時間や負担の軽減につながると期待されている。また、買い物が困難な高齢者への支援策としても注目を集めている。
大手スーパー各社は、店舗の商品を活用した宅配サービスや専用サイトの整備を進め、利便性の向上を競っている。一方で、インターネットの利用に不慣れな高齢者への対応や、配送コストの負担、安定したサービス体制の構築などが課題となっており、食品スーパーの新たな販売形態として定着するかどうかが注目されている。
2016年7月当時の背景
2016年当時、共働き世帯や高齢者世帯の増加を背景に、食料品を自宅まで届けるネットスーパーへの需要が高まっていました。厚生労働省の調査では、共働き世帯は専業主婦世帯を大きく上回り、買い物に十分な時間を確保しにくい家庭が増加していました。
また、高齢化の進展に伴い、近隣に食料品店がなく、自動車の運転も難しい「買い物弱者」への対応が社会課題となっていました。こうした中、イオンやイトーヨーカ堂、西友などの大手スーパーは、店舗の商品をそのまま配送するネットスーパーを拡大し、注文から最短で当日中に商品を届けるサービスも広がり始めました。
2026年現在の状況
現在では、ネットスーパーは共働き世帯や高齢者だけでなく、幅広い世代が利用する買い物手段として定着しました。新型コロナウイルス禍をきっかけに利用者が大きく増え、食料品をオンラインで購入することへの抵抗感は大きく低下しました。
大手各社もサービスを強化しており、イオンはAIやロボットを活用した専用物流拠点を備える「Green Beans」を展開し、約3万品目を取り扱うほか、最短当日・1時間単位での配送を実現しています。また、ONIGOなど即時配送サービスの登場により、最短40分程度で商品が届くサービスも普及し、「買い物へ行く」から「届けてもらう」への変化が進みました。
「ぜひ来てください」から「こちらから伺います」へスタンスの変化
スーパーの集客策といえば、長年「特売」が定番でした。安売りの商品を目玉にして客に来店してもらうことが、小売業の基本だったのです。しかしネットスーパーは、その発想を大きく変えました。
特売で客を呼ぶのではなく、店の方から客のもとへ商品を届けるという考え方です。宅配という仕組み自体は昔からありましたが、「スーパーは買いに行く場所」という常識の中では、積極的に届けるという発想は一般的ではありませんでした。
スーパーは数千、数万点の商品を扱い、価格や特売品も日々変化します。「牛乳1L、豚肉細切れ400g、白菜ハーフ、トイレットペーパー、そして……」と電話で注文することは、利用者にとっても店側にとっても現実的ではありません。一方、飲食店の出前であれば、数十種類のメニューから電話一本で「もりそば2つ、かつ丼大盛り1つ」と注文できます。
スマートフォンの普及は、その発想を実現する手段となりましたが、変わったのは技術よりむしろ、「ぜひ店へ来てください」という従来のスタンスから、「ご自宅へ伺います」へと変わった、スーパー側の考え方だったのかもしれません。
10年後の未来
ネットスーパーの普及は、単に買い物が便利になったという話ではありませんでした。そこにあったのは、「客を待つ商売」から「客のもとへ向かう商売」への発想の転換です。かつては、良い商品を並べ、特売を行い、客に来店してもらうことが商売の基本でした。しかし、人口減少や競争の激化が進む中、待つだけでは選ばれない時代になりつつあります。
ネットスーパーが示したのは、単なる宅配サービスの普及ではなく、人口減少や競争の激化を背景に、「客を待つ」ことが当たり前だった商売は、自ら客へより積極的に近づく時代へと変わり始めたことかもしれません。
そしてその流れは企業だけにとどまらず、例えば自治体もふるさと納税や移住支援を積極的に発信し、「選ばれる地域」を目指すようになりました。10年前に歩き始めたのはスーパーではなく、これまで待つことを前提としてきた組織そのものだったのかもしれません。
