「『人生100年時代の到来』 シニア雇用70歳を見据えた制度改革の議論本格化へ」「『定年の壁を越えて』 シニア層の活躍推進に向けた企業の新たな挑戦」

2016年7月23日の報道概要

 政府は、少子高齢化の進展による労働力不足への対応策として、高齢者の就労機会を拡大するための制度見直しの検討を進めている。定年後も意欲のある高齢者が働き続けられる環境を整備するため、将来的に70歳程度までの就業を視野に入れた雇用制度のあり方について議論を本格化させる。

 政府は、一億総活躍社会の実現に向けた成長戦略の一環として、高齢者の就業促進を重要課題に位置付けている。年金制度との整合性も踏まえながら、企業に対して継続雇用や定年延長を促す仕組みの検討を進める方針だ。

 一方、企業側からは、人件費の増加や人事制度の見直しが必要になるとの指摘もあり、高齢者の能力や経験を生かしながら若年層との雇用バランスをどう図るかが課題となりそうだ。

2016年7月当時の背景

2016年当時、日本では少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15~64歳)の減少が深刻な課題となっていました。団塊の世代が70歳代に入り始める将来を見据え、労働力不足を補うためには、高齢者が長く働ける環境づくりが不可欠との認識が政府内で広がっていました。

2016年版高齢社会白書によると、60歳以上の高齢者の約72%が「働きたい」と考え、そのうち「働けるうちはいつまでも」が28.9%、「70歳くらいまで」が16.6%を占めるなど、高齢者自身の就業意欲も高いことが明らかになっていました。さらに、2015年には65歳以上の雇用者数が458万人となり、初めて60~64歳の雇用者数(438万人)を上回りました。

こうした状況を受け、政府は「一億総活躍社会」の実現を掲げ、定年延長や継続雇用制度の充実、高齢者の能力や経験を生かせる多様な働き方の整備を検討しました。一方で、企業側からは人件費の増加や賃金制度・人事制度の見直しが必要になるとの懸念も示され、高齢者の活躍促進と企業負担との両立が大きな政策課題となっていました。

2026年現在の状況

シニア雇用を巡る環境は、この10年で大きく変化しました。2021年には改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業には70歳までの就業機会を確保する努力義務が課されました。定年延長だけでなく、継続雇用や業務委託契約、社会貢献活動への従事など、多様な選択肢が認められています。

厚生労働省によると、2025年時点で65歳までの雇用確保措置を実施している企業は99.9%に達し、70歳までの就業確保措置を導入した企業も34.8%まで拡大しました。また、65歳以上を定年とする企業は34.9%となり、定年延長は着実に広がっています。

そもそも「定年」とはなんなのか

「定年」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。年を取って働けなくなる年齢でしょうか。それとも年金を受け取る節目でしょうか。あるいは会社の就業規則で決められた退職年齢でしょうか。

定年そのものは必ずしも必要な制度ではありません。能力があり、本人にも働く意欲があるなら、年齢だけを理由に仕事を辞める必要はないからです。実際、欧米では年齢による一律の定年を設けず、能力や契約を基準に雇用を続ける企業も少なくありません。

一方、日本では終身雇用と年功序列を前提に、年齢とともに役職や賃金が上がる仕組みが、長く企業や社会の安定を支えてきました。その制度を維持するには、組織を循環させる「出口」が必要であり、その役割を担ったのが定年です。「年功序列には定年が必要」であり、「実力主義には年齢不問がなじみやすい」

定年とは、高齢だから働けなくなる制度ではなく、その国の雇用システムを映し出す制度なのでしょう。

10年後の未来

サッカー選手は30歳前後が引退の目安とされます。しかし、2026年のワールドカップでは39歳の長友佑都選手が日本人初となる5大会連続出場を果たし、41歳のクリスティアーノ・ロナウド選手、そして39歳のリオネル・メッシ選手も世界最高峰の舞台で存在感を示しました。一方で、サッカーにはU-18やU-23といった年齢制限のカテゴリーがあり、若い世代に活躍の機会を与える仕組みもあります。

学問の分野でも、若手研究者を対象とするフィールズ賞には40歳未満という条件がある一方、ノーベル賞には年齢制限がありません。社会には年齢で区切る制度と、年齢を問わない制度が共存しています。それらの線引きは、一体何のために設けられているのでしょうか。

定年もまた、時代の働き方に合わせて作られた社会のルールです。これからの社会で問われるのは、「何歳で区切るか」ではなく、「何のために区切るのか」なのかもしれません。