「クレジットカード不正利用、過去最多 被害120億円超」「カード不正利用、番号盗用が6割 被害額は過去最多」

2016年8月16日の報道概要

クレジットカードの不正利用による被害が過去最多となったことが分かった。日本クレジット協会の調査によると、2015年の国内発行カードの不正利用被害額は120億9000万円に上り、前年の114億5000万円から5.6%増加した。

被害の内訳では、カードそのものを偽造した「偽造カード」による被害が23億1000万円、カード番号などを盗用した被害が72億2000万円、その他が25億6000万円となった。番号盗用による被害だけで全体の約6割を占めている。

背景には、インターネット通販の普及に伴い、カードそのものを提示しなくても番号などの情報だけで決済できる機会が増えていることがある。カード情報を盗み取られれば、カード本体が手元に残っていても不正利用される可能性があり、カード会社などが警戒を強めていた。

2016年8月当時の背景

2016年当時、クレジットカードを取り巻く環境は「便利になるほど、情報を盗まれる機会も増える」という転換点にありました。経済産業省によると、2015年の国内のインターネット通販市場は13兆7746億円で、前年比7.6%増でした。物品のネット通販だけでも7兆2398億円に達し、全ての物品販売に占めるインターネット通販の割合は4.75%まで上昇しています。スマートフォン経由の利用も広がっており、消費者がカードを店舗のレジだけでなくインターネット上で使う場面が急速に増えていました。

一方、2015年のカード不正利用被害額は120億円で、2014年の114億円から増加しました。特に番号盗用は72億円と全体の59.7%を占め、偽造カードによる被害23億円を大きく上回っています。つまり当時すでに、不正利用の主戦場は「カードを偽造する」ことから「カード情報を盗む」方向へ移り始めていたのです。

2026年現在の状況

現在、被害は減るどころか桁違いの規模になりました。日本クレジット協会によると、2024年の不正利用被害額は555億円と過去最高を記録し、2025年も510億円に上りました。2015年の120億円と比べると、2025年は約4.2倍です。しかも2025年の内訳では、番号盗用が475億円で、被害全体の約93%を占めています。

一方、対策も大きく変わりました。2025年にはEC加盟店に脆弱性対策などが求められるようになり、2026年3月にはセキュリティガイドライン6.1版が公表されています。 2026年第1四半期の被害額は113億円で、番号盗用が106億円、93.3%を占めました。ただし2026年から調査対象の見直しが行われているため、過去との単純比較には注意が必要です。

「盗まれるもの」が変わった

2016年当時、クレジットカードの不正利用といえば、カードそのものを盗まれたり、偽造されたりするイメージがまだ強く残っていました。しかし、実際の被害ではすでに「番号盗用」が中心になりつつありました。これは、不正利用の舞台が財布の中からインターネットへ移ったことを意味します。カード本体が手元にあっても、カード番号や有効期限、セキュリティコードなどの情報が流出すれば、本人になりすまして決済できるようになったためです。

この変化によって、「カードを落とさない」という従来型の防犯だけでは不十分になりました。守るべき対象はプラスチック製のカードから、そのカードに紐づくデジタル情報へと広がったのです。さらに現在では、盗まれた情報そのものだけでなく、ログイン情報や認証情報まで狙われています。10年前には「カードを盗まれる」という目に見える犯罪だったものが、現在では「目に見えない情報を盗まれる」犯罪へ変化したといえます。

10年後の未来

財布を盗まれたら、財布は手元からなくなります。カードを盗まれても、カードがなくなるので気づきます。ところが、生年月日を盗まれても誕生日はなくなりません。住所を知られても家はそこにあります。メールアドレスが漏れても、メールはいつも通り届きます。

考えてみれば、情報の「盗難」は、物の盗難とは少し違うのかもしれません。物は「自分のもの」から「他人のもの」へ移りますが、情報は移るのではなく、コピーされて増えていきます。自分の生年月日は自分の手元に残ったまま、知らない誰かも同じ情報を持つことになります。

10年後には、顔、声、行動履歴、位置情報など、さらに多くの「自分を表す情報」が誰かの手元に増えているかもしれません。そのとき私たちは、情報漏洩を「盗まれた」と表現しているでしょうか。それとも、「自分だけのものだったはずの情報が、知らないうちに第三者へ拡散した」と捉えるようになっているでしょうか。盗難とは、何かを失うことだと思っていた私たちの感覚そのものが、変わっているかもしれません。