「『マイナス金利の導入が直撃した地方銀行の収益』 生き残りをかけて広がる業務提携」「『融資だけでは維持できないビジネスモデルの限界』 地元の金融インフラを守るための新たな選択」

2016年8月16日の報道概要

日本銀行のマイナス金利政策を受け、全国の地方銀行で本業の貸出金利ざやが縮小し、経営環境が厳しさを増している。人口減少などを背景に地域の貸出需要が伸びにくくなる中、生き残りをかけた経営統合や業務提携を模索する動きが広がっている。

各行は、システムの共同化や店舗網の見直しなどによるコスト削減を進める一方、県境を越えた連携にも乗り出している。これまで地域ごとに独立した経営を続けてきた地方銀行は、低金利と人口減少という二重の逆風を受け、従来の経営体制の見直しを迫られている。

2016年8月当時の背景

2016年当時、地方銀行を取り巻く環境は、人口減少などによる地域経済の先細り懸念に加え、日銀のマイナス金利政策によって一段と厳しさを増していました。日銀は2016年1月にマイナス金利政策の導入を決定し、2月から実施。貸出金利にも低下圧力がかかり、2016年2月の国内銀行の貸出約定平均金利は1.098%と過去最低を更新しました。 また、帝国データバンクの調査では、また、帝国データバンクの調査では、2016年3月期に調査対象の主要112行のうち96行で利ざやが悪化していました。

預金金利を大きく下げにくい一方、貸出金利は低下するため、預金を集め、企業や個人に貸し出すという銀行本来の業務が収益を生みにくくなっており、単独経営を続けることへの危機感から経営統合やシステム共同化などの再編が注目されていました。

2026年現在の状況

2016年にマイナス金利で収益悪化が懸念された地方銀行ですが、現在は再編が実際に進み、銀行数そのものが減少しています。財務省によると、地方銀行は1990年末の132行から2025年3月末には97行へ約3割減少し、第二地方銀行も68行から36行へほぼ半減しました。

また、金利環境も大きく変わり、日銀の利上げを受けて貸出金利が上昇。全国地方銀行協会によると、2025年度の貸出金利回りは1.22%、預貸金利回り差は1.01%まで改善し、コア業務純益は前年比34.7%増の2兆2412億円となりました。 つまり、2016年に危機として語られた「低金利による収益悪化」は一服した一方、人口減少やデジタル化を背景とした再編は続いています。

地方銀行の再編は、かつての都市銀行再編とどう違うのか

1990年代後半から2000年代にかけて、都市銀行では大規模な再編が進みました。バブル崩壊後の不良債権問題や金融危機を背景に、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行が統合してみずほ銀行へ、住友銀行とさくら銀行が統合して三井住友銀行へ、東京三菱銀行とUFJ銀行が統合して三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)へと集約されました。銀行そのものの経営基盤が揺らぐ中、統合によって体力を高めることが再編の大きな目的でした。

一方、2016年当時の地方銀行再編の直接的な背景にあったのは、日銀のマイナス金利政策です。貸出金利の低下によって本業の利ざやが縮小する一方、人口減少などによって地域の貸出需要も伸びにくく、単独で収益を確保することが難しくなっていました。そこで、経営統合やシステム共同化などによってコストを削減し、経営基盤を強化する動きが広がりました。

つまり、都市銀行の再編が「不良債権問題や金融危機によって揺らいだ銀行を立て直すための再編」だったのに対し、地方銀行の再編は「低金利によって従来の収益モデルが成り立ちにくくなったことへの対応」という性格が強いのです。

10年後の未来

ところで、地方銀行はなぜメガバンクに飲み込まれないのでしょうか。例えばコンビニのように、全国の店舗をいくつかの大手に集約することも、理屈の上ではできそうです。もし地方銀行も数社のメガバンクに集約されれば、経営は効率化されるかもしれません。それでも、地方銀行同士の合併はあっても、メガバンクに吸収される地方銀行がほとんどないのは、双方にそれぞれ理由があるからなのでしょう。

一方でもし、地域の企業や住民にとって身近な地方銀行がメガバンクに吸収されたら、これまでより心理的な距離が生まれ、気軽に相談しにくくなるかもしれません。そう考えると地方銀行は、いわば「地域のかかりつけ医」のような存在なのかもしれませんし、それがメガバンクという「大病院」に集約されることなく、住みわけできている理由なのかもしれません。

地方銀行という”診療所どうし”が協力しながら地域に残るのか、それとも効率化を優先して”大病院”に集約されていくのか。10年後、地方銀行はどちらの姿に近づいているのでしょうか。