「動物園からゾウやキリンが消える? 迫る『2030年問題』」「高齢化と輸入規制、動物園の人気者に迫る飼育危機」
2016年09月08日の報道概要
日本の動物園で、ゾウやゴリラ、キリンなどの大型動物を将来にわたって飼育し続けることが難しくなるとの懸念が広がっている。飼育動物の高齢化が進む一方、ワシントン条約などによる野生動物の輸入規制が強まり、新たな個体を海外から導入することが容易ではなくなっているためだ。
この問題は「動物園の2030年問題」と呼ばれている。日本動物園水族館協会(JAZA)の予測では、2010年に国内で46頭が飼育されていたアフリカゾウが、2030年には7頭まで減少する可能性がある。また、ニシゴリラも2010年の23頭から2030年には6頭まで減少すると見込まれている。
こうした状況を受け、動物園側では繁殖を進めるとともに、動物園同士で飼育個体を移動させるなど、国内で個体数を維持する取り組みを進めている。2016年には京都市動物園で生まれたキリンを神戸市立王子動物園へ移し、繁殖を目指す取り組みも行われている。
2016年09月当時の背景
戦後、日本各地に動物園が次々と開園し、ゾウ、キリン、ゴリラ、ライオンなどは「動物園の定番」として親しまれてきました。しかし、かつてのように野生の動物を捕獲して海外から導入することは難しくなっています。ワシントン条約による国際取引の規制などに加え、海外からの輸送や検疫にも費用がかかることなどが理由として挙げられています。
また、国内で飼育されている動物も高齢化しており、JAZAは2010年時点のアフリカゾウ46頭が2030年には7頭、ニシゴリラ23頭が6頭になると予測していました。
新しい動物を買ってくるのが年々難しくなる中、限られた個体を動物園同士で移動させながら繁殖させ、血縁関係なども考慮して長期的に飼育個体を維持する必要がありました。
2026年現在の状況
2026年現在、2016年に懸念された「人気動物が一斉に日本の動物園から消える」という状況にはなっていません。例えばアフリカゾウは2026年6月時点で、マルミミゾウを含め国内13園で23頭が確認されています。2010年の46頭からは減っていますが、2030年に7頭になるという当時の予測を大きく上回る水準です。2025年には広島市安佐動物公園でマルミミゾウが誕生するなど、国内繁殖も続いています。
動物園側の取り組みも変化しています。JAZAは2025年に「JAZA将来構想2025」を策定し、2026年度から2035年度までの10年間の行動計画を開始しました。そこでは、各園がどの動物を飼育していくかを計画し、国内外の関係機関と協力して飼育個体を維持・管理することが掲げられています。かつてのように「人気動物をどう輸入するか」だけでなく、「限られた個体をどう将来につなぐか」という考え方が中心になっています。
未来を変えるために未来を予測する
2016年に示された「動物園2030年問題」は、このまま何も対策をしなければ、将来的にゾウやゴリラなどの飼育を続けることが難しくなるという警告でした。
その後、繁殖や個体の移動、飼育情報の共有などの取り組みが進み、2026年現在、当時予測された減少が、そのまま進んでいるわけではありません。これはもちろん、予測が外れたという話ではなく、そうならないように関係者が努力した結果と言えます。
ところで、こうした「このままでは将来こうなる」という予測は、「動物園2030年問題」に限らず、これまでさまざまな分野で示されてきました。
例えば、コンピューターの誤作動が世界的に懸念された2000年問題では、日付の処理によるシステム障害が予測され、大規模な改修や検証が行われました。あるいは、オゾン層の破壊によって、有害な紫外線が大量に地上に降り注ぐようになると懸念された問題についても、原因物質の規制や代替技術の導入が進められ、現在は回復に向かっています。いずれも、予測された未来がそのまま現実になったわけではありません。
未来予測には、当たればうれしいものもあれば、そうでないものもあります。「動物園2030年問題」のように、悪い予測が現実にならないようしっかり対策した結果、「予測が外れた」とか、「やはり大したことなかった」と言われるのは皮肉なものですね。
10年後の未来
日本国内で広く認識されている未来予測の一つに少子高齢化に伴う人口減少があり、世界的には地球温暖化が挙げられます。どちらも長年にわたって将来の変化が予測され、さまざまな対策が続けられてきました。しかし、予測された未来のすべてを回避できるとは限りません。
先月26日には、ネパールで氷河や山岳地帯の崩壊をきっかけとする大規模な土石流災害が発生しました。今回の災害が地球温暖化によって引き起こされたと特定されたわけではありませんが、氷河の融解との関連を指摘する声があります。もし温暖化がその一因だったとすれば、これは長年予測されてきた変化が、望ましくない形で現実になった一例とも考えられます。
動物園から動物が減っていけば、最後に残るのは『園』だけです。来てほしくない未来は永遠に、「未だ来ず」であり続けてほしいものです。
