「JASRACへの排除措置命令確定、審判請求を取り下げ」「包括契約をめぐる7年半の争い、JASRACが命令受け入れ」

2016年09月15日の報道概要

日本音楽著作権協会(JASRAC)が放送局と結んでいる「包括利用許諾契約」をめぐり、公正取引委員会から受けていた排除措置命令が確定する。JASRACは9月14日までに、命令の取り消しを求めていた審判請求を取り下げた。

問題となったのは、放送局がJASRACの管理する楽曲を幅広く利用できる一方、他の著作権管理事業者の楽曲を利用すると、その分の使用料が追加で発生する仕組みだった。公正取引委員会は2009年、この仕組みが競合する事業者の参入を妨げているとして、独占禁止法違反に当たると判断し、排除措置命令を出していた。

その後、JASRACによる不服申し立てをめぐって審判や裁判が続いた。2015年には、最高裁判所が公正取引委員会の審決を取り消す東京高等裁判所の判断を支持し、審決の取り消しが確定した。その後、公正取引委員会で改めて審判が行われる中、JASRACは審判請求を取り下げ、排除措置命令が確定した。

2016年09月当時の背景

音楽著作権の管理では、放送局が大量の楽曲を継続的に利用するため、1曲ごとに契約するより、まとめて許諾を受ける「包括契約」のほうが扱いやすいという事情があります。問題は包括契約そのものではなく、その料金の計算方法でした。

当時の仕組みでは、JASRACの楽曲を使う場合は包括料金の範囲内で利用できる一方、他の管理事業者の楽曲を使うと追加の費用が発生します。そのため、放送局にとってはJASRAC以外の楽曲を選ぶ動機が弱くなり、新たな著作権管理事業者が放送分野へ参入しにくい構造が生まれていました。

一方、2015年度以降は、放送で実際に使われたJASRAC管理楽曲の割合を使用料に反映する仕組みへ変更されています。2016年の時点では、すでに料金の計算方法を見直す動きも始まっていました。

2026年現在の状況

2026年現在も、放送局がJASRACと包括契約を結ぶ仕組みは残っています。JASRACによれば、地上波放送の包括使用料は、放送事業収入に1.5%を掛け、さらにJASRAC管理楽曲の利用割合を反映して算定する仕組みになっています。多くの放送局は大量の楽曲を継続的に利用するため、現在も包括契約を選択しています。

一方で、2016年当時に競合事業者として存在していたNexToneも、著作権管理事業を続けています。JASRAC側も、放送事業者による全曲報告の普及や、実際の利用割合を料金に反映する仕組みなどによって、当時とは環境が変化したと説明しています。

現在では、包括契約そのものをなくすのではなく、実際にJASRACの管理楽曲がどれだけ使われたかを料金に反映する仕組みへと変わっています。

便利さの行く末

一括管理という仕組みは、最初から誰かを困らせるために作られたものではありません。権利を持つ人にとっても、利用する側にとっても、窓口を一つにまとめたほうが便利だからこそ、多くの人が集まります。

便利だから集まる。集まるから管理する側は大きくなる。大きくなると、さらに多くの人にとって便利になる。しかし、あるところから、この循環が別の問題を生み始めます。

しかし、あるところから、この循環が別の問題を生み始めます。多くの人が一つの仕組みを利用しているため、新しい事業者が参入しても利用者を集めにくくなります。競争が弱まれば、利用者にとって選択肢が少なくなり、結果として不利益につながる可能性もあります。

便利さを追求した結果が、別の選択肢を遠ざけてしまう。今回のニュースには、そんなふうにも見えます。

10年後の未来

便利で使いやすいサービスに人が集まるのは、自然なことです。検索ならGoogle、買い物ならAmazon、スマートフォンならAppleやAndroid、パソコンならMicrosoftというように、多くの人が使うサービスには、それだけの理由があります。

ただ、一つのサービスに人が集まり続けると、いつの間にか「他にも選択肢がある」という状態そのものが失われていくことがあります。最初は「一番便利だから選んでいた」はずなのに、気がつけば「それ以外を選ぶ理由がない」ではなく、「それ以外を選ぶことが難しい」という社会になっているかもしれません。

便利だけれど、選択肢がほとんどない社会。多少不便でも、いくつかの選択肢から自分で選べる社会。どちらが暮らしやすいのでしょうか。

10年後、私たちの身の回りには、今よりさらに便利なサービスが増えているかもしれません。その一方で、「便利だから選んだもの」が、いつの間にか「それしか選べないもの」になっていないか。便利さと選択肢の間で、社会はどんなバランスを選んでいるのでしょう。