「シカやイノシシによる農作物被害が全国で深刻化」「農山村の生産基盤を揺るがす深刻な打撃 年間数百億円にのぼる農業被害」
2016年8月15日の報道概要
全国の農山村で、シカやイノシシなどによる農作物被害が深刻化している。農林水産省の調べでは、野生鳥獣による農作物の被害額は年間数百億円規模に上り、丹精込めて育てた作物が収穫を目前に荒らされるケースも相次いでいる。
被害が深刻なのは中山間地域だ。農家の高齢化や後継者不足が進む一方、鳥獣の捕獲を担ってきたハンターも高齢化。担い手不足が重なり、増え続ける鳥獣への対応が追いつかない地域も少なくない。
農作物を守るための捕獲活動は、農業だけでなく、地域社会の維持にも直結する。人口減少や高齢化が進む集落では、鳥獣被害が農業経営を圧迫し、耕作放棄地の増加にもつながるなど、地域の存続を脅かす問題となっている。
2016年8月当時の背景
2016年当時の報道背景としては、単に「野生動物が増えた」というだけでなく、農山村の人口減少・高齢化と鳥獣被害が同時に進んでいたことが大きな問題となっていました。農林水産省によると、2015年度の農作物被害額は176億円、被害面積は8万1000haに達し、シカが60億円、イノシシが51億円を占めました。被害額は前年より8%減少したものの、依然として巨額でした。
一方、捕獲を担う狩猟者も減少・高齢化。環境省の統計では、狩猟免許所持者は1975年の約51万8000人から2015年には約19万1000人まで減少し、60歳以上が約12万人と全体の6割超を占めていました。 「農家が減る→耕作放棄地が増える→野生動物が人里に近づく→捕獲する人も減る」という悪循環が生まれつつあり、鳥獣被害が農業問題を越えて、中山間地域そのものの存続に関わる問題として注目されていたのです。
2026年現在の状況
2016年に深刻化していた鳥獣被害は、現在も農山村の大きな課題として残っています。農林水産省によると、2024年度の農作物被害額は188億円で、前年度から24億円増加しました。内訳はシカ79億円、イノシシ45億円で、両種だけで全体の約3分の2を占めています。さらに近年はクマの問題も大きく注目され、2023年度にはクマによる農作物被害が7億円に増加しました。
問題は農作物だけにとどまりません。クマが住宅地や市街地に出没し、人身被害を引き起こすケースも相次ぐなど、鳥獣問題は「農家の被害」から「地域住民の安全」の問題へと広がっています。
クマが変わったのか、ヒトが変わったのか
ところで、「近年、クマが人里に出没するようになった」理由については、さまざまな説明がなされます。ただし、どの説明にも疑問が残ります。
- 「山の餌が減った」
ドングリなどが凶作になった年には、餌を求めてクマが人里へ出ると説明されることもあります。
→ しかし凶作は昔から繰り返されており、「近年のクマ問題」全体を説明することはできません。 - 「クマが人間を恐れなくなった」
人の味を覚え、人間を避けなくなった個体がいるという人もいます。
→ しかし、「昔から人を襲うクマはいたのに、なぜ最近になって変化したのか」という疑問も残ります。 - 「報道がクマ問題を大きくしている」
大きな事故をきっかけに報道が増え、クマへの関心がさらに高まり、関連ニュースが次々と取り上げられるようになった可能性があります。
→ しかし、報道が増えたからといって、実際の出没や被害まで増えたことにはなりません。報道量の増加と実態の変化は分けて考える必要があります。
結局、「クマが変わった」「人間が変わった」「環境が変わった」「クマを見る人間が変わった」「報道が変わった」――どの見方にも、それを裏付ける材料と、同時に説明しきれない部分がありそうな気がします。
10年後の未来
2016年、シカやイノシシによる農作物被害は深刻な社会問題として大きく報じられていました。それから10年、現在では当時ほどニュースの中心になることはありません。対策の強化によって被害が抑えられたのか、シカやイノシシ自身の生息域や行動が変化したのか、それとも社会の関心や報道量が変わっただけなのか、理由はわかりません。
では、現在大きな問題となっているクマは、10年後どうなっているでしょうか。人間側の対策やクマの行動の変化によって危険が減っているかもしれませんし、危険性は変わらないまま、いつしかニュースにならなくなっているかもしれません。もちろん、今以上の大きな問題になっている可能性もあります。
かつて大きく報じられ、いつの間にかニュースから姿を消したさまざまな問題。それらは解決したのか、それともただニュースにならなくなっただけなのでしょうか。
