「JOGMEC、カナダで無煙炭の共同探鉱契約」「希少性高い無煙炭、供給源の多様化へ」
2016年8月29日の報道概要
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は29日、カナダ・ブリティッシュコロンビア州北西部のパノラマノース地域で、無煙炭の権益取得を目指す共同探鉱契約を豪州の石炭会社アトラム・コール社と締結したと発表した。契約は24日付で結ばれ、JOGMECは探鉱費として2年間で300万カナダドルを負担し、21%の権益を取得できるほか、その後さらに200万カナダドルを負担すれば、合計35%まで権益を取得できる仕組みだ。
対象地域ではこれまで本格的なボーリング調査は行われていなかったが、過去の踏査などで少なくとも9層の無煙炭の存在が確認されていた。JOGMECにとって無煙炭の共同探鉱は初めてで、石炭の供給源を多様化し、日本の資源確保につなげる狙いだ。
2016年8月当時の背景
日本は石油や天然ガスだけでなく、石炭についても海外からの輸入に大きく依存しています。特に無煙炭は産出地域が限られ、2015年度の日本の輸入量約630万トンのうち、ロシアが4割超、豪州が3割超を占めていました。無煙炭は世界の石炭埋蔵量の約1%とされ、産出地域も限られることから、調達先を増やしておくことが課題となっていました。
こうした状況を受け、JOGMECは2013年度に石炭の共同探鉱制度を設け、海外企業と費用を分担しながら、まだ開発されていない資源を探す取り組みを進めていました。カナダでの案件は今回で2件目となり、資源そのものを確保するだけでなく、将来の供給源を増やしておくことが資源安全保障につながると考えられていました。
2026年現在の状況
パノラマノースではその後、JOGMECとアトラム・コール社による探鉱が進みました。2016年の契約時にはボーリング調査すら行われていませんでしたが、2018年までにボーリング調査などが実施され、2019年には19孔、総掘進長約4,441メートルの調査結果をもとに、無煙炭の資源量1億7,400万トンが初めて計上されました。JOGMECは探鉱費500万カナダドルを負担し、35%の権益を取得しています。
2026年現在もパノラマノースは開発候補として残っており、アトラム・コール社によれば、JOGMEC35%、同社65%の共同事業となっています。一方、現時点で商業生産に移行したわけではなく、1億7,400万トンの資源量の資源量は「推定資源量」に分類されています。高品位の無煙炭が確認され、開発に向けた基礎的な検討も行われています。
ただし、10年前とは環境も変わりました。日本では現在も年間1.6億トン前後の石炭が輸入されていますが、脱炭素化が進む中で石炭需要そのものは減少方向にあります。
繰り返される「資源を武器にする」時代
2016年のカナダでの共同探鉱事業は、日本が資源の供給源を増やそうとする動きの一つでした。その背景には、資源を一国に依存することへの警戒があります。象徴的だったのが2010年の中国によるレアアース輸出規制です。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をきっかけに日本向け輸出が滞り、資源が外交上の圧力として使われ得ることを日本は実感しました。
その後、ロシアのウクライナ侵攻では、欧州がロシア産天然ガスに大きく依存していたことがエネルギー安全保障上の弱点として露呈しました。IEAによると、EUのガス供給に占めるロシアの割合は2010年の約3割から2019年には45%超まで高まっていました。 そして現在は、米国とイランの戦争によってホルムズ海峡の通航が大幅に滞り、日本の原油輸入の約95%を占める中東依存の危うさが改めて浮かび上がっています。
かつて、「世界経済がつながれば、自国もダメージを受けるから戦争が起きなくなるはず」という考えがありました。しかし、資源を持つ国が、その資源を外交上の力として利用する構図は、今もなくなっていません。
10年後の未来
資源が政治や安全保障の道具になること自体は、最近始まった話ではありません。太平洋戦争も、資源の輸入を制限された日本が追い詰められていった歴史があります。戦後、自由貿易が広がり、必要な資源を世界中から買える時代が長く続いたことで、私たちはその問題を少し忘れていたのかもしれません。
では、もし将来、ある国から資源の供給を止められ、国の経済や暮らしが立ち行かなくなったらどうするのか。戦争に踏み込むわけにもいかない。一方で、相手国の条件を全面的に受け入れるのも難しい。
資源を巡る世界の緊張が高まり、「戦わず、屈服せず、どうやって生き残るか」という問いは、ますます重くなっているのかもしれません。カナダでの探鉱は、その小さな一歩だったのでしょう。
