「井上尚弥、10回KOでV3 ペッチバンボーンを下す」「井上尚弥、3度目の防衛に成功 10回右ストレートでKO」

2016年09月04日の報道概要

 WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥選手は4日、神奈川県座間市のスカイアリーナ座間で同級1位のペッチバンボーン・ゴーキャットジム選手(タイ)と対戦し、10回3分3秒KOで勝利した。3度目の防衛に成功し、戦績を11戦11勝(9KO)とした。

 井上選手は序盤から左ジャブやボディー攻撃を軸に試合を優位に進めた。ペッチバンボーン選手は粘り強く防御し、井上選手は拳の負傷などもあって決定打に苦しんだが、10回に連打から右ストレートを決めて試合を終わらせた。

 2014年12月に獲得したWBO世界スーパーフライ級王座を守り、世界戦では5試合連続で勝利。3試合連続で世界ランキング1位の挑戦者を退けた。陣営は年末の次戦で、WBA同級王者ルイス・コンセプシオン選手との統一戦を目指す方針を示している。

2016年09月当時の背景

 当時23歳の井上選手は、すでに「モンスター」の異名で注目されていました。2012年のプロデビューからわずか8戦目でWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、2014年には当時の王者オマール・ナルバエス選手を2回KOで破っています。その後もワルリト・パレナス選手、ダビド・カルモナ選手を退け、今回が3度目の防衛戦でした。

 一方、この頃の井上選手を取り巻く大きな話題の一つが、同じスーパーフライ級に進出してくると見られていたローマン・ゴンサレス選手との対戦でした。45戦全勝38KOを誇るゴンサレス選手は「軽量級最強」とも評されており、9月にはWBC同級王者カルロス・クアドラス選手への挑戦を控えていました。井上選手との頂上対決への期待が高まっていました。

2026年現在の状況

2016年の井上選手はWBO世界スーパーフライ級王者でしたが、その後は階級を上げ、2018年にバンタム級、2023年にスーパーバンタム級で世界王座を獲得しました。2022年にはバンタム級で主要4団体の王座を統一し、2023年12月にはスーパーバンタム級でも4団体統一を達成。2階級での4団体統一という歴史的な記録を打ち立てています。

さらに世界戦では勝利を重ね、2025年12月のアラン・ピカソ戦で世界戦27連勝を達成し、ジョー・ルイス、フロイド・メイウェザーの26連勝を抜いて単独最多となりました。2026年5月には東京ドームで中谷潤人選手を判定で下し、4団体統一王座の7度目の防衛に成功。世界戦の連勝記録も28に伸ばしています。また、全階級を通じた選手の評価であるPFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングで、世界1位に選ばれたこともあります。

2016年には「3度目の防衛」が大きなニュースだった23歳の王者が、10年後には4階級制覇、2階級での4団体統一、そして世界戦28連勝を成し遂げ、全階級を通じた世界一のボクサーへ。2016年の「V3」は、その後の長いキャリアから見れば、まだ序盤の出来事だったことになります。

勝てる選手から、負けられない選手へ

2016年の井上尚弥選手は、若くて才能のある「勝てる選手」でした。しかし、勝利を積み重ねるほど、ファンからも勝つのは当たり前とされ、やがて評価は「何ラウンドでKOするか」へと変わっていきました。

象徴的なのが、2024年のルイス・ネリ戦です。井上選手はこの試合でプロ初のダウンを喫しましたが、試合には勝利しました。それでも「井上がダウンした」こと自体が大きなニュースになりました。普通のボクサーなら、ダウンは試合の一場面にすぎません。ところが、勝ち続けてきた選手になると、負けるどころか、ダウンすることさえ「まさか」と受け止められます。

井上尚弥は「無敗のまま引退するのか」それとも「初めて負けた試合を最後にするのか」とつい考えてしまいますが、勝ちを積み重ねた結果、「負けても次の試合がある」というごく普通の選択肢が、ファンの頭から抜け落ちているようにも見えます。

10年後の未来

あとどのくらい現役を続けられるのかは分かりません。井上選手自身からも、キャリアの終わりを見据えた言葉が聞かれるようになりました。しかし、だからこそ気になるのは、井上尚弥がどのように現役生活を終えるのかということです。

無敗のままリングを降りるのか、どこかで初めて敗れてそれを節目にするのか、あるいは敗れてもなお戦い続けるのか。2016年には一試合先の未来を楽しみにしていた選手が、10年後にはキャリアそのものの終わり方まで注目される存在になっています。

次の一試合だけでなく、最後の試合がどんなものになるのかまで今からワクワクさせてくれる。そんな選手は、そう多くないのかもしれません。