「G20杭州サミット開幕」「世界経済の持続的成長へ、G20首脳が協議」

2016年9月4日の報道概要

 中国・杭州で、主要20カ国・地域(G20)の首脳会議が開幕した。安倍晋三首相をはじめ、米国のオバマ大統領、中国の習近平国家主席ら各国首脳が出席し、世界経済の成長や国際協力について協議する。2016年のG20は「革新的で、活力があり、相互につながり、包摂的な世界経済」の実現を主要なテーマとしている。

 世界経済は低成長や貿易の伸び悩みなどの課題を抱えている。英国の欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票後の先行き不透明感や、テロ、難民問題なども重なり、各国の政策協調が求められている。首脳会議では、金融・財政政策に加え、構造改革などを組み合わせて成長を促す方策を話し合う。

 中国が議長国を務める今回のG20では、自由貿易やデジタル経済、イノベーション、テロ対策など幅広い議題が取り上げられる。世界の主要国が一堂に会し、経済成長だけでなく国際社会が抱えるさまざまな課題について協調を模索する場となっている。

2016年9月当時の背景

 G20首脳会議が重視されるようになった背景には、2008年の世界金融危機があります。それまで財務相や中央銀行総裁の会合だったG20は、金融危機をきっかけに首脳級の会議へ格上げされ、主要国が協力して世界経済を支える場となりました。

 2016年には、世界経済の成長が力強さを欠いていました。IMFは当時、世界的な貿易の伸び悩みや低い投資、低インフレなどを成長の重しとして指摘しています。また、英国のEU離脱決定による不透明感や、中国経済の減速、地政学的な緊張なども世界経済のリスクとして意識されていました。

 一方で、G20には世界の主要な経済大国が集まっています。19カ国とEUで構成され、世界のGDPの約85%、貿易の約75%、人口の約3分の2を占める巨大な枠組みです。

2026年現在の状況

 G20はその後も毎年開催され、世界経済だけでなく、貿易、気候変動、エネルギー、保健、食料、デジタル技術など、国際社会が抱える幅広い課題を話し合う場へと広がりました。2023年にはアフリカ連合(AU)も正式なメンバーとなり、現在は19カ国にEUとAUを加えた21のメンバーで構成されています。

 ただし、G20の存在感が高まる一方で、加盟国同士の対立も目立つようになりました。ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立、貿易摩擦など、主要国が同じ方向を向くことが難しい問題が増えています。G20は「世界の主要国が協力する場」であると同時に、「主要国の意見がぶつかる場」にもなっています。

 2026年は米国が議長国を務め、12月14、15日にマイアミで首脳会議が開かれる予定です。米国は経済成長、規制負担の軽減、エネルギー、新しい技術などを重点課題として掲げています。2016年に中国・杭州で開かれたG20から10年。G20そのものは残っていますが、その中で各国が協調することの難しさは、むしろ増しているようにも見えます。

G7を20カ国に増やしたわけではないG20

 G20という名前からすると、G7のメンバーを増やして20カ国にしたような印象があります。しかし、そもそもの性格が少し違います。G7は、政治や経済について比較的近い立場にある国々が集まり、「こういう方向に進もう」と話し合う場です。一方のG20は、世界金融危機という「何とかしないとまずい」という状況から生まれた、経済規模の大きな国々を集めた枠組みで、政治体制も価値観も利害関係もかなりバラバラです。

 だからG20は、「みんなで同じ方向を向きましょう」というより、「争わない点を整理しましょう」という性格が強いのかもしれません。「お互い分かり合えないのは仕方ない。でも、やるならちゃんとリングの上でやろう。それから、凶器はなしな」と、格闘技のルールを決める感じでしょうか。自由貿易や金融など、各国の利害がぶつかる分野でも、世界経済そのものを壊さないための最低限のルールを確認する仕組みです。

 2016年には世界経済の成長をどう支えるかが中心でしたが、その後は米中対立やロシアによるウクライナ侵攻など、各国が同じ方向を向くことがますます難しくなりました。それでもG20はなくなっていません。全員が仲良くなるためではなく、仲良くなれなくても同じテーブルにつき、どこまでなら互いに争わずに済むのかを確認する。世界がバラバラになるほど、こうした「喧嘩をするためのルール」の重要性はむしろ増しているのかもしれません。

10年後の未来

G20サミットは、参加国が多いだけに、総花的で大きな成果が見えにくい会議だと思われることもあります。しかし、国際社会の枠組みには、そもそも「何かを決める」こととは別に、「何かを起こさない」ための役割があります。

戦時国際法は、戦争そのものをなくすことはできなくても、戦争になったときにやってはいけないことを定めています。国連総会も、すべての国際問題を解決できるわけではありませんが、国同士が共通のルールや考え方を確認する場として機能しています。

私たちは、戦争が起きた、攻撃が行われた、危機が発生した、といった「起きた出来事」には注目します。しかし、「起きなかった出来事」には、なかなか気づきません。喧嘩はなくせないなら、せめてルールを守る。「ルールを守った喧嘩」という、一見矛盾した状態を維持することにも、国際社会のルールには意味があるのではないでしょうか。

G20サミットが世界をよくしてくれると期待する人は少ないかもしれませんが、もっとひどい状況になるのを防ぐには、役立っているのかもしれません。