「『次世代の本命』全固体電池、2020年までのEV主力化へ向けて開発が加速」「エネルギー密度の劇的な向上。EVの航続距離問題を解決する『究極の電池』の実用化」

2016年6月23日の報道概要

 電気自動車(EV)の性能を大きく左右する次世代電池「全固体電池」の開発競争が本格化している。自動車メーカーや電池メーカー各社は、2020年代初頭の実用化を視野に研究開発を加速させており、次世代EVの普及を左右する重要技術として注目を集めている。

 全固体電池は、現在主流のリチウムイオン電池で使用される液体電解質の代わりに固体材料を用いることで、安全性の向上に加え、高容量化や充電時間の短縮、航続距離の延長が期待されている。EVの課題とされる「充電時間」と「走行距離」の改善につながる技術として、世界各国が開発を急いでいる。

 一方で、量産技術の確立や製造コスト、耐久性など、実用化にはなお多くの課題が残されている。特に、日本企業は関連特許や材料技術で世界をリードしているとされ、国際競争が激しさを増す中、その優位性をいかに実用化へ結び付けるかが焦点となっている。

2016年6月当時の背景

2016年当時、世界ではパリ協定の採択を契機に脱炭素社会への機運が高まり、自動車産業はガソリン車からEVへの転換期を迎えていました。しかし、EVの普及には航続距離の短さや充電時間の長さといった課題があり、その原因となるリチウムイオン電池の性能向上が最大のテーマとなっていました。

こうした中、大きな期待を集めたのが全固体電池です。液体電解質を固体に置き換えることで、安全性を高めながら大容量化や急速充電を実現できる可能性があることから、「次世代電池の本命」として注目されました。日本企業は関連技術で世界をリードしているとされ、早期実用化への期待が高まる一方、量産技術や製造コスト、耐久性など解決すべき課題も多く、「本当に実用化できるのか」という期待と慎重論が入り混じる状況でした。

2026年現在の状況

現在、全固体電池は依然として「次世代電池の本命」と位置付けられていますが、2016年に期待されたような本格普及には至っておらず、現在も実証・試験段階にあります。量産コストや耐久性、製造技術などの課題は残る一方で、研究開発は着実に前進しています。

その象徴的な出来事として、2026年6月には全固体電池を搭載した電動航空機が初の有人飛行に成功し、実用化へ向けた新たな一歩を刻みました。自動車への本格搭載はこれからですが、「夢の技術」が研究室を飛び出し、実社会で性能を証明し始めたことは大きな節目といえます。

一方、この10年で最も進歩したのは従来型のリチウムイオン電池でした。性能や急速充電技術は大きく向上し、EVの実用性も飛躍的に改善しています。全固体電池は既存技術に取って代わる存在というより、その先の次世代を担う技術として、実用化に向けた挑戦が今も続いています。

まだ見えない次世代エネルギー

次世代エネルギー技術が難しいのは、「性能が高い技術」と「社会で使える技術」は必ずしも一致しないからです。全固体電池は安全性や容量、充電速度に優れる一方、量産コストや耐久性、製造工程の確立など高い壁が残されています。また、水素エンジンも脱炭素技術として期待され、トヨタは関連特許を広く公開するなど普及を後押ししていますが、水素の製造・輸送・供給インフラの整備という大きな課題を抱えています。

つまり、未来を変えるのは「優れた技術」だけではありません。誰もが手頃な価格で利用でき、社会全体に普及するための生産体制やインフラ、ルールづくりまで含めて初めて技術革新は完成します。次世代エネルギーの競争とは、電池やエンジンの性能だけでなく、「社会全体をどう作り替えるか」という競争でもあるのです。

10年後の未来

10年後の未来では、全固体電池はEVの常識を塗り替える技術として世界中に普及しているのでしょうか。それとも、かつて録画規格でVHSに敗れたベータ方式や、液晶テレビに敗れたプラズマテレビのように、リチウムイオンに敗れ歴史の片隅へと消えていくのでしょうか。

技術の未来は、その性能だけでは決まりません。価格や生産性、インフラ、社会との相性など、さまざまな条件が重なって初めて標準となります。2016年から10年が過ぎた今でも、その答えはまだ出ていません。では、さらに10年後の人々は、この全固体電池を「世界を変えた発明」と振り返るのか、それとも、「あの頃、そんな技術も期待されていたね」と語るだけの存在になっているのか。もしかすると、10年後もまだ「ステイ」の状況かもしれません。