「地方への移住者急増、都市部から若年層が流出する現状」「『地方創生』の旗印のもと 移住支援に注力する自治体の奮闘」
2016年7月10日の報道概要
政府が進める地方創生政策を背景に、都市部から地方への移住に関心を寄せる若者が増えている。人口減少や過疎化が進む地方では、各自治体が移住相談窓口の設置や住宅支援、就業支援などを充実させ、都市部からの移住者の受け入れに力を入れている。
東京での生活や働き方を見直し、自然豊かな環境で子育てや仕事を両立したいと考える若者も少なくない。一方で、移住後の安定した雇用の確保や収入、地域コミュニティへの適応など、不安の声も聞かれる。
政府は東京一極集中の是正と地方経済の活性化を重要課題に掲げており、地方への人の流れを生み出すための施策を進めている。自治体による移住支援策も広がりを見せる中、地方移住が定着するかどうかは、雇用や生活環境の整備など、受け入れ体制の充実が鍵を握るとみられる。
2016年7月当時の背景
2016年当時、政府は「地方創生」を重要政策に掲げ、東京一極集中の是正と地方への新たな人の流れの創出を進めていました。各自治体では移住相談窓口の設置や住宅・就業支援を拡充し、地方移住の促進に力を入れていました。
政府は2015年に移住関連情報を一元化する「全国移住ナビ」を本格稼働させたほか、「移住・交流情報ガーデン」を開設し、2015年度の移住あっせん件数は約7,600件に達しました。さらに、都市部の人材が地方で活動する「地域おこし協力隊」は2015年度の2,799人から2016年度には4,000人を超える規模へ拡大し、多くの自治体が受け入れを進めました。
一方で、総務省の住民基本台帳人口移動報告では、東京都への転入超過は依然として続いており、地方移住への関心が高まる一方で、人口の東京集中という大きな流れを変えるまでには至っていませんでした。
2026年現在の状況
地方移住は、この10年で一時的なブームから、多様な働き方・暮らし方の選択肢の一つとして定着しました。新型コロナウイルス禍ではテレワークの普及を背景に地方移住への関心が高まり、その後も各自治体は移住支援金や住宅支援、子育て支援などを充実させています。また、「地域おこし協力隊」の隊員数は2025年度に8,196人と過去最多を更新し、受け入れ自治体も1,187団体に拡大しました。任期を終えた隊員の約7割が定住するなど、一定の成果も見られます。
一方で、東京一極集中は依然として大きな課題です。地方では人口減少や高齢化が続き、仕事や医療、教育など生活基盤の確保も容易ではありません。現在では「移住するか、しないか」という二択ではなく、二地域居住やワーケーション、継続的に地域と関わる「関係人口」といった、多様な関わり方を重視する政策へと広がっています。地方創生は、単に人を移す政策から、地域との新しい関係を築く政策へと変化しつつあります。
地方でもできること、地方でしかできないこと
テレワークの普及によって、「地方でもできること」は確実に増えました。例えば、都市部の企業に勤めながら地方で働くことや、オンライン会議、行政手続き、買い物などは、以前より場所を選ばずに行えるようになっています。しかし、それだけでは地方へ移住する理由にはなりません。「東京でもできるし、地方でもできる」のであれば、多くの人は仕事や娯楽、人との出会いが豊富な都市を選ぶかもしれません。
地方創生に本当に必要なのは、「地方でもできること」を増やすだけではなく、「地方でしかできないこと」を生み出すことです。地域の自然や文化を生かした仕事、特色ある産業、地域コミュニティとのつながりなど、その土地ならではの価値があって初めて、人は「地方を選ぶ」という意思決定をします。地方創生には住宅、就業支援だけでなく、地方ならではの魅力を育てることが重要です。
10年後の未来
かつては、グローバル化こそが未来であるかのように語られていました。ヒト、モノ、カネが自由に行き来すれば、社会はより豊かになるという考え方ですが、グローバル化が語られるはるか前から、国内ではヒト、モノ、カネの移動は自由でした。
確かに、モノやカネは行き来することで全体の効率を高めます。しかし、人の流れは少し事情が異なります。水が高い所から低い所へ流れるように、人もより多くの仕事や収入、利便性を求めて都市へ集まるのは自然な流れです。地方から都市へ専門職が移れば、代わりに都市から地方へ単純労働者が移るわけではありません。高度経済成長期は高い出生率がそれを補っていましたが、少子化が進んだ現在では、その均衡が崩れました。
移動の自由がある国内において、地方から都市部への人口流出を容易に止めることはできません。地方創生は、人々に「地方に住みたい」と思うような逆向きの強いインセンティブを作り出すことができるのか、それとも、「地方でもできる」で終わってしまうのでしょうか。
