「実売数を押し上げる起爆剤、雑誌不況を打破する付録商戦」「『バッグが本体で雑誌がおまけ?』 豪華ブランド付録で女性誌が次々完売」
2016年7月24日の報道概要
出版不況が続く中、女性誌の「豪華付録」が書店で存在感を高めている。人気ブランドとコラボレーションしたバッグやポーチなどの限定アイテムを付けた雑誌は発売直後に完売するケースも相次ぎ、書店では付録を目当てに購入する読者の姿が目立つ。
出版社各社は、誌面の充実に加え、付録の魅力を前面に打ち出した商品開発を強化。ブランドロゴ入りのバッグやポーチなどを相次いで企画し、縮小が続く紙媒体市場で読者の関心を集めようと競争を繰り広げている。
書店関係者からは「付録が売れ行きを左右するケースも珍しくない」との声も聞かれ、女性誌市場では誌面だけでなく付加価値を重視した販売戦略が定着しつつある。
2016年7月当時の背景
2016年当時の出版業界は、スマートフォンの普及や電子メディアの台頭により、雑誌市場の縮小が続いていました。その中で存在感を高めたのが、「豪華付録」を前面に打ち出した女性ファッション誌です。特に宝島社はブランドとのコラボ付録を積極的に展開し、『sweet』5月号は実売約27万部、前年同期比約168%、『SPRiNG』8月号も前年同期比410%と大幅な伸びを記録。人気の付録付き号は発売直後に完売するケースも珍しくありませんでした。
一方で、出版流通全体では雑誌の売上減少が続いており、日本出版販売(日販)の2016年度中間決算でも、雑誌の店頭売上は前年を下回る厳しい状況が報告されています。その中で、女性ファッション誌だけは付録人気を追い風に店頭売上が前年比3.1%増と、2011年以来5年ぶりのプラスを記録しました。誌面だけでは読者を引きつけることが難しくなる中、雑誌は「読むもの」から「限定アイテムを手に入れるもの」という新たな価値を生み出し、縮小する市場で生き残りを図っていました。
2026年現在の状況
付録付き雑誌の人気は現在も続いていますが、その位置づけは2016年当時とは変化しています。出版科学研究所によると、雑誌市場は1997年をピークに縮小が続き、休刊する雑誌も増加しています。一方で、人気キャラクターやブランドとのコラボ付録が付いた号は現在でも発売直後に売り切れることがあり、「欲しい付録がある号だけを買う」という消費スタイルが定着しました。
現在では、付録そのものが雑誌の大きな魅力となり、発売前から付録情報を専門に紹介するウェブサイトやSNS、動画投稿も数多く見られます。宝島社をはじめとする出版社も、高級ブランドや人気キャラクターとのコラボを継続し、バッグやポーチだけでなく、コスメや文具、インテリア用品など付録の種類も多様化しています。
誌面を読むために雑誌を購入するという従来のスタイルから、「付録が欲しいから雑誌を買う」という価値観は、今や出版業界の一つの販売手法として定着しました。紙媒体を取り巻く環境は依然として厳しいものの、付録は雑誌ならではの強みとして、現在も重要な役割を担い続けています。
実は「付録」ではなかった雑誌の「付録」
日本では昔から「おまけ」の文化が親しまれてきました。戦前のグリコのおもちゃにはじまり、カルビーのプロ野球カードやビックリマンシールなど、「おまけ欲しさに商品を買う」現象は決して珍しいものではありません。店主が「1個おまけしておくよ」と気前よくサービスする光景も、日本人にはどこか親しみがあります。
しかし、法律の世界では「おまけ」は意外と厳しく定義されています。景品表示法では、おまけ(景品類)の価値には上限が設けられており、高価なおまけで販売競争をすることは原則として認められていません。
そのため、同じように見える「握手券付きCD」と「付録付き雑誌」は、実は法的な考え方が異なります。握手券はCDの購入に付随する「景品・特典」として扱われる一方、雑誌のバッグやポーチは「バッグ付き雑誌」という一体の商品として販売されています。つまり、消費者にはどちらも「おまけ」に見えても、法律上は片方が特典、もう片方が商品そのものなのです。
おまけの文化は長い歴史を持ちますが、その「おまけ」が本当におまけなのか、それとも商品の一部なのか。実は、その境界線は私たちが思っている以上に複雑なのです。
10年後の未来
おまけ文化は昔から存在します。グリコのおもちゃやビックリマンシールのように、「商品よりおまけが欲しい」という現象も珍しくありません。
しかし、おまけには景品表示法による規制があり、高価な景品を自由に付けられるわけではありません。そこで出版社が生み出したのが、バッグをおまけとして付けるのではなく、「バッグ付き雑誌」という一つの商品にしてしまう発想でした。
どこか、いわゆる”使い捨てカメラ”を「レンズ付きフィルム」と頑なに呼び続けたメーカーの発想にも通じます。一般の感覚では「どう見てもカメラ」「どう見てもバッグが主役」と思ってしまいますが、企業にとっては商品の定義そのものが重要だったのです。極端に言えば、「家付きのドア」や「車付きのガソリン」のような発想でしょうか。
法律や制度と向き合う企業は、ときに私たちの常識をひっくり返すネーミングを生み出します。笑ってしまう話ですが、その少し強引な発想こそ、おまけ文化を育てた知恵だったのかもしれませんね。
