「西之島、火山活動を調査へ 警戒範囲縮小で専門家が現地へ」「新たな大地に生態系の兆し 小笠原・西之島で火山と自然を調査」
2016年8月18日の報道概要
小笠原諸島の西之島で、火山活動と島の自然環境を調べる調査が行われる。西之島では2013年11月に噴火が始まり、溶岩の流出によって島が大きく拡大した。その後、2015年11月下旬以降は噴火や溶岩流出が確認されず、火山活動は低下している。
気象庁は17日、西之島の火口周辺警報を「入山危険」から「火口周辺危険」に引き下げ、警戒が必要な範囲を火口から約1.5キロから約500メートルに縮小した。海上警報も解除している。
18日の海上保安庁の観測では、噴気や火山ガスの放出は確認されず、島の総面積は約2.68平方キロメートルで、前月から大きな変化はなかった。火山活動が落ち着く中、今後は島の地形や生態系がどのように変化するかが注目される。
2016年8月当時の背景
2016年当時の西之島は、海の上に新しい大地が生まれていく過程を直接観察できる、極めて珍しい場所でした。2013年11月に始まった噴火では溶岩が流れ続け、2015年1月までの総噴出量は約0.1立方キロメートル、1日平均約20万立方メートルと推定されています。
一方、2015年11月下旬以降は噴火や溶岩流出が確認されなくなり、2016年には火山活動の低下が明確になっていました。8月17日には警戒範囲も縮小され、研究者が島の自然を調査する条件が整いつつありました。西之島は2011年に世界自然遺産となった小笠原諸島に含まれ、人為的な影響が極めて少ないことから、火山によって新しくできた土地に、海鳥や植物などがどのように定着していくのかを観察できる貴重な研究対象となっていました。
2026年現在の状況
西之島はその後も火山活動を繰り返し、2017年、2018年に再び噴火したほか、2019年12月から2020年にかけて大規模な噴火が発生しました。2020年の噴火では、島の大部分が溶岩や火山灰に覆われ、それまで形成されていた生態系が大きく失われました。
現在は噴火警報が発令されており、島のほぼ全域を含む山頂火口から約1.5キロの範囲が警戒対象となっています。2025年の総合学術調査では、噴火による山体の成長は確認されず、浸食が進んでいることが分かりました。一方、2020年の大規模噴火後では初めて植物の生育が確認され、カツオドリなどの海鳥も生息・繁殖しています。
地球がつくった、生態系の巨大な実験室
2016年当時、一般には「火山の噴火で島が大きくなった」というニュースとして受け止められました。しかし学術的に見ると、西之島の価値は、島が大きくなったこと以上に、生態系がほぼゼロから始まる様子を観察できることにあります。普通の科学実験なら、温度や湿度、土壌などの条件を人間が整えます。しかし、生態系そのものをゼロから作り、そこにどんな生物が最初に現れ、何が次の生物を呼び、どのように環境が変わっていくのかを実際の自然の中で観察するのは簡単ではありません。
西之島では、火山がほぼ何もない土地をつくり、人間がほとんど手を加えないまま、その後の変化を追うことができます。いわば、地球そのものが用意した巨大な実験室で、生態系が生まれていく様子をライブ中継で見ているようなものです。しかも2020年の大規模噴火によって一度リセットされたことで、その後の再生まで観察できる。西之島は、完成した自然を見る場所ではなく、自然ができていく過程そのものを見る場所なのです。
10年後の未来
10年後の西之島は、どんな生き物が暮らす島になっているのでしょうか。植物が増え、昆虫が定着し、海鳥が繁殖するという流れの先には、これまで島にいなかった生き物が新たに加わっているかもしれません。もしかすると、鳥が運んできた種子から新しい植物が広がり、その植物を利用する昆虫が増えるなど、少しずつ生態系のつながりが複雑になっている可能性もあります。
さらに気になるのは、哺乳類です。西之島のような海に囲まれた島へ、哺乳類が自力でたどり着くことは簡単ではありません。流木などに乗って偶然漂着する可能性はあるものの、いつ、どんな動物がやってくるのかは誰にも分かりません。10年後もまだ哺乳類がいないかもしれないし、思いもよらない生き物が「最初の上陸者」になっているかもしれません。
火山が島をつくり、生き物が少しずつ集まり、生態系が形を変えていく。その過程を私たちは観察し続けることができます。西之島の10年後は、自然がどこまで複雑な世界を自らつくり上げるのかを見せてくれる、地球規模のライブ中継になっているかもしれません。
