「防衛費、5兆円超を要求へ 過去最大を更新」「防衛省、来年度予算を増額へ 中国・北朝鮮への対応を強化」
2016年8月19日の報道概要
防衛省が2017年度予算の概算要求で、防衛関係費を過去最大とする方向で調整している。中国による東シナ海での活動や北朝鮮の弾道ミサイル開発などを背景に、防衛力の強化を進める。
要求には、弾道ミサイルへの対処能力を高めるための装備や、南西諸島の防衛態勢を強化するための経費などを盛り込む方針だ。F35A戦闘機やオスプレイなどの調達も続ける。
防衛関係費は2016年度当初予算で初めて5兆円を突破しており、2017年度も増額となれば、安倍政権発足後5年連続の増加となる。防衛力の強化を進める一方、厳しい財政事情の中で必要な財源をどう確保するかも課題となっている。2017年度の概算要求は8月末に財務省へ提出される予定で、要求額と最終的な予算額の行方が注目されている。
2016年8月当時の背景
2016年当時、日本の防衛政策では、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発への対応が大きな課題となっていました。2016年度の防衛関係費は5兆541億円と初めて5兆円を超え、防衛省は2017年度も増額を目指していました。中期防衛力整備計画では、2014~2018年度の5年間で防衛関係費をおおむね23兆9700億円とし、潜水艦15隻、F35A戦闘機28機などの整備規模を定めていました。
2017年度の概算要求では、F35Aや輸送機C2、オスプレイのほか、弾道ミサイルへの対応としてSM3ブロックⅡAやPAC3MSEなどの取得も盛り込まれます。防衛力を強化する一方で、装備品の調達には巨額の費用がかかり、将来の支払いとなる「後年度負担」も膨らんでいました。
2026年現在の状況
2016年に5兆円を超えた防衛関係費は、その後も増加を続けました。2017年度の当初予算は5兆1251億円となり、2016年度から1.4%増加しました。
その後、安全保障環境の変化を受けて増額のペースはさらに大きくなります。2022年に策定された防衛力整備計画では、2023~2027年度の5年間で43兆円程度の防衛力整備を行う方針が決定されました。2026年度予算では、防衛力整備計画の対象経費として8兆8093億円を計上し、2023年度から2026年度までに計画事業費の81%を措置しています。
2016年に「5兆円を超えること」が大きなニュースになった防衛費は、10年後には8兆円台が予算として組まれる規模になりました。防衛費の増額は一時的な動きにとどまらず、日本の安全保障政策そのものの大きな転換と結びついています。
「過去最大」の持つ意味
防衛費が「過去最大」と聞けば、どんな印象を持つでしょうか。一部の人や一部の国が言うように、日本は軍事大国化しているのでしょうか。
では、例えば最低賃金が「過去最高」と聞いたらどうでしょう。「物価のほうがそれ以上に上がっているじゃないか」「他の国はもっと上がっているのでは」と思う人も多いかもしれません。つまり、「過去最大」や「過去最高」という言葉だけでは、その数字が実際にどんな意味を持つのかまでは分からないのです。
名目額が過去最大でも、物価を考えれば実質的には増えていないかもしれません。伸び率が過去最大なのか、GDPに占める割合が過去最大なのかでも話は変わります。そもそも、物価や賃金が長期的に上がっていけば、いろいろなものが「過去最大」になっていくのは自然なことです。
「過去最大」という言葉は事実ですし、間違いではありません。報道する側も、わざと誤解させようとしているわけではないでしょう。何より、目を引く見出しにしたいという気持ちは、記事を書く側なら誰にでもあります。
ただ、もし新聞の見出しが「防衛費、戦時中の400倍に膨張 過去最大の5兆円」だったら、どう感じるでしょうか。ちなみに、戦艦大和の建造費は約1億4千万円と言われています。数字そのものは事実かもしれません。でも、「いやいや、80年前と名目額だけ比べてどうするんだ」「ミスリーディングだ」と思う人も多いはずです。
事実だけを並べても、見せ方によって受ける印象は大きく変わります。数字に悪意はなくても、どの数字を強調するかによって、結果的に人の考え方をある方向へ向けてしまうことはあるのかもしれません。
10年後の未来
2016年に「防衛費5兆円超、過去最大」と報じられたニュースを、10年後の私たちはどう見るのでしょうか。2026年には防衛費は8兆円台まで増えています。2036年にも、おそらく「防衛費、過去最大」という見出しが登場しているかもしれません。
ただ、防衛費は多ければいいわけでも、少なければいいわけでもありません。必要な防衛力を維持するにはお金が必要ですが、そのお金は税金から支出され、ほかの政策に使えるお金でもあります。大切なのは「過去最大かどうか」ではなく、日本にとってどの程度の防衛力が必要で、そのためにどの程度のお金を使うことが適正なのかということなのでしょう。
10年後、「過去最大」という見出しを見ても、それだけで増額を歓迎したり、逆に軍事大国化を心配したりするのではなく、「では、適正な水準はどこなのか」と考えられるようになっているでしょうか。防衛費を考えるということは、金額の大小だけを見るのではなく、何を守るために、どこまでお金を使うのかを考えることなのかもしれません。
